沖田総受2

□よしや淵瀬に身は沈むとも(前編)
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しばらく歩いていくとさすがでかい花火があるだけあって人が多い。目新しい屋台があちこちにあるのに目を引かれた。

あ、妙な綿飴、杏飴とかあんの?リンゴ飴じゃなくて?
良い匂いのする屋台を眺めながら歩いていくとやっと気分が高揚してきた。

何たべよっかなーなんでこういうところで食べるのってすっげーうめえんだろうか。夕飯も食べてこなかったから腹へったな。


「おばちゃん、それちょうだい。」

しばし悩んでとりあえず最初の一発目はチョコバナナでいこうときめた。これって元価で考えるとイイ商売だよなー。バナナ一本にチョコ絡めただけでこの値段かよ。でも買うけど。

「あいよ。ほら。このままでいいかい?」
威勢のいいおばちゃんからうまそうなバナナを差し出されて棒を掴んだ。からめたばかりのチョコが垂れてきて慌てて舌で舐める。

それからおばちゃんにお金を払おうと袂をさぐってしばし考えた。

・・・・あ、俺金持ってなかったんだ。

「おばちゃん、俺金なかった。」
そういって舐めたバナナを差し出すと
「えーそりゃ困る!」とおばちゃんの声。
そうだろうなー当たり前か。舐めちまったの返されてもなあ。

くっそー。土方なにしてやがる。早くこねえからこうなるんだ。
「ちょっと待っててくだせえ。今財布呼びまさ。」
そういって土方さんの携帯に連絡を入れるが「電波が混雑しているため、しばらく通話はお待ちください。」なんてアナウンスがながれちまう。
みんな!携帯使いすぎでさ!


うーんと考えていると
「いくら?」
声がふってきて知らない男がお金をおばちゃんに渡した。

「この子の分払うよ。」
にこっと笑う若い男。
髪が短めでメガネをかけたインテリ風の優男だ。暑いのにきっちり袴をきて背筋の伸びた端正なたたずまい。俺の知り合い・・・じゃねえよな。どう見ても。

「なんですかい?」
混雑してきた屋台の前では営業妨害なので店から少し離れて相手に問う。

「いや、困ってたみたいだから。」
「知らないお人に払ってもらえませんや。」
「おばちゃん困ってたよ。」
そう言われてうーんと詰まった。

「あとで人呼びやすから、それまで立て替えてもらってていいですかい?」
確かに助かった。ありがとうございやすと礼をいうと
「いいよ。これくらい。おごるよ。」なんて穏やかな笑顔。見知らぬ奴にお人好しすぎねえか?
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