ヘヴンな駄文
□誕生日の夜(中×啓)
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大好きな人が生まれたその日を。
その人と二人で祝えるのは、どんなに幸せな事か―――。
一ヶ月も前からプレゼントを用意して。
二週間も前からデートプランは立てていた。
何度も何度も頭の中でイメージして。
一人でニヤニヤしては我に返り、を繰り返し。何とか予行練習も済んだ。
あまり早く言った所で、学生会の仕事が山積みの中嶋さんの予定には入れて貰えない(それどころか忘れられちゃう)から、ギリギリまで待って待って。
仕事にも区切りが付いて、ようやく切り出せる…と思った時、突然やって来た王様がこう言い出したんだ。
「おい、ヒデ! 来週の日曜はお前の誕生パーティをやる事にしたからな! ちゃんと予定空けとけよ。もちろん啓太、お前もだぞ」
分かったな!と言いながら、答えを聞く事なく王様はご機嫌に出て行ってしまった。
後に残された中嶋さんは、諦めにも似た深いため息を吐き。
俺は……がっくりと項垂れた。
………こんな筈じゃなかったのに。
今頃は懸賞で当てた超高級ホテルでディナーを取りながら、一緒に中嶋さんの誕生日をお祝いしてた筈なのに。
中嶋さんの為に用意したケーキは甘さが控えめで。啓太にしてはいい物を選んだじゃないかって言われて喜びながら、二人で食べて。
出来たら「あーん」とか……誕生日くらいは、恋人みたいな事をしたいなって思ったり…。まぁ、相手が中嶋さんじゃ…それは無理だろうけど。
でも、メインイベントの誕生日プレゼントの時くらいは。
「おめでとうございます、中嶋さん!」
そう言ってプレゼントを手渡すと、中嶋さんは当然のように受け取ってくれて。
顔には出さないけど、きっとすごく喜んでくれるんだ。
それから、中嶋さんはいつもの笑みを浮かべて、
「プレゼントはもちろんお前込みだろう」
なんて言われたりして…。
〜〜っ、俺のバカ…っ!!
恥ずかしくなるような想像ばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡る。だけど……。
「………はぁ」
結局、いくら考えたって想像は想像で。
願望だけど現実じゃない。
「………はぁぁぁ」
女々しいくらいのため息が零れ出る。
いくらため息を吐いたって、この状況が変わる訳でもないのに。