ヘヴンな駄文
□XXXBirthday!!(七啓っぽいやつ)
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「七条さーん、大変ですーっ!!」
ノックもせず会計室に飛び込んだ俺を少し驚いた顔で七条さんが迎えてくれる。
「どうしたんですか、伊藤くん? そんなにも慌てて」
落ち着いて下さいと言われて、深呼吸を繰り返す。
今日は女王様がいないと分かっていたから良かったけど、もしもいたらすっごく怒られただろうな。
少し落ち着いた頭で、部屋の真ん中にいる七条さんに近付く。
「あの…今日、王様の誕生日なんですけど、誕生日プレゼントが決められなくって。もう当日だし、俺どうしたらいいかと思って…」
「それで僕の所へ相談に来たんですね。ところで伊藤くん、その手に持っているのは何ですか?」
七条さんの視線が俺の持っている白い箱に注がれている。
慌ててここまで来たけど、これの取り扱いだけは気を付けて来たから中身は大丈夫な筈だ。
「これ…は……、王様に渡そうと思って……ケーキ、なんですけど。俺、ケーキ作るの初めてだったからちょっと不恰好になっちゃって」
へへっ…と、照れ隠しに笑っていると、七条さんがその箱をそっと取り上げてテーブルの上に置いた。
「し、七条…さん?」
何でそんなに悲しそうな顔、してるんだろう。俺、気付かないうちに酷い事しちゃった…?
動揺した俺を知ってか知らずか、七条さんがにっこりと、何かを企むような笑みを浮かべた。
「伊藤くん、会長にプレゼントは必要ありませんよ」
「…え?」
「あの人が1番欲しいものを知っていますから」
「えっ!? そうなんですかっ?」
それならもっと早く七条さんに訊いておけば良かった。
そう思ったのも束の間。
「なのでケーキも要りません」
なんて言われて驚いてしまった。
「えぇっ?! な、何でですかっ?」
ケーキくらいはいいと思うんだけど。
王様は甘いものも平気だって、ちゃんと聞いておいたんだから。
あっ、もしかして…。
「七条さんもケーキを用意してたんですか?」
だから俺のがいらないのかと思ったら、違うらしい。
…そうだよな。七条さんが王様にケーキをあげるなんて、何か想像できない。そんな間柄にはとても見えないし…。
「え、じゃあ……」
今日の七条さんはよく分からない。いや、いつもよく分かんないけどさ。
今日は輪をかけて分からない。あの…悲しそうな表情をした訳とか。
「伊藤くん」
「…はい……って、わぁっ?!」
自分の考えにのめり込んでいて、いつの間にか七条さんの顔がすぐ傍にある事に気が付かなかった。
引こうとした顔をしっかりと包まれる。七条さんの手は俺の顔よりも暖か…い。
それ以上に、七条さんに触れられて、俺の体温は急速に上がっていたんだけど。
「これまでの事は仕方がないとちゃんと分かっているんです。ですが、これからは……伊藤くんの『初めて』は僕が欲しいんです。我が儘だって分かっていますけど…」
―――駄目、でしょうか?
そんな風に聞かれて、誰がNOと言えるんだ。
まして大切な…大好きな恋人のお願いなのに。
俺が作った初めてのケーキを王様にあげようとしたから拗ねてるだなんて、七条さん…可愛すぎるよ。
「ダメじゃ…ないです」
小さく呟くと、七条さんはにっこりと嬉しそうに笑ってくれた。
「ありがとう、伊藤くん」
「いえ…」
王様も先輩としては好きだけど、やっぱり七条さんには誰も敵わないから。