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しょうもない話ですが、和啓SSです。良かったらどうぞ。
『恋人ゲーム』
「なぁ、啓太。十回ゲームをしないか?」
突然、和希がそんな事を言い出した。
「十回ゲーム?」
「ほら、ピザって十回言ってみて、ってやつ」
「…ん、ああ。あれね」
俺の部屋か和希の部屋でたわいもない話をしたりして過ごすのはいつもの事だ。
だけど、今日は妙に真剣な顔で雑誌を読んでるからどうしたのかと思ってたんだけど、どうやら俺の取り越し苦労だったみたいだ。
俺の無言を了承と取ったらしい和希が、勝手に話を進めていく。
「じゃ、啓太。好きって十回言ってみて」
「……は?」
思わず、今なんて?と、聞き返したくなってしまった。
「だーかーら、好きって十回言って?」
「………」
首を傾げて甘えるな、と言ってやろうかと思ったけど……やめた。
何て言うか…和希の目がすごくキラキラしてたから。
理事長の時の和希は、すごくカッコ良くて賢くて、やっぱり大人なんだなぁ…と思わせる雰囲気なんだけど、同級生の時の和希は、時々―――本当に時々だけど、甘えたがりになる。
でもそれは決してイヤな訳じゃなくて。
むしろ、いつも助けられ、支えられてばかりだから嬉しいとさえ思える。
だって俺にだけ見せてくれる、理事長でもカズ兄でもない、ただの遠藤和希の姿だから。
でもそんなに期待した目で見つめられたら、恥ずかしく仕方がないじゃないか。
「んー、じゃあ……すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき。はいっ、言ったよ!」
和希の顔を見ては言えなくて、目を微かに横へ流しながら無心で言ってしまった。
まるで某とんち小僧のオープニング曲みたいな言い様に、和希の顔がしょんぼりと曇る。
「なぁ、啓太。もうちょっと心を込めて言って欲しいなぁ、なんて。……ダメ…か?」
「だ…っ」
ダメかだなんて……言わせない顔してる癖に。……ずるいよ、和希は。
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きっ!」
逸らしていた視線を合わせて、ついでに顔も思いっきり近付けて言ってやる。
恥ずかしいったらありゃしない。
………でも。
「ああ、俺も好きだよ」
なんて、こんなにも嬉しそうな和希の顔が見れたんだから……ヨシとしないと、な。
「じゃあ、ここは?」
「んむ?」
ぷにょん、と口唇に和希の人差し指が押し付けられた。
強くはないけど、口唇は動かせない。これじゃあ、分かっていても答えられないじゃないか。
どうしようかと考えていると、
「けーた。答え、聞きたい?」
嬉しそうな目に悪戯っ子のような光を覗かせながら、和希が訊いてくるから。
「ん…」
見上げたその瞳で頷くと、蕩けそうなほど優しい目をした和希の顔が、いっそう近付いてくる。
「答えは…堪らなくキスしたい啓太の口唇だよ」
「なっ――!?」
なんて…恥ずかしい事を…っ。
ボフンッと顔が瞬時に熱を持った。
本当に…よくもまぁ、そんな恥ずかしい台詞を照れもせずに言えるもんだ。
全然引っかけになってないじゃないか!と、照れ隠しの言葉を口にしようとして、押さえていた和希の人差し指が口唇から離れていた事に今、気が付いた。その指が滑るように顎にかかり、持ち上げられる。
「かず…」
だけど俺が和希の名前を呼び終えるよりも早く、またしても俺の口唇は塞がれてしまった。今度は和希のそれで。
「んんっ…」
薄く開いていた口唇を優しく割って、和希の舌が潜り込んでくる。俺の抵抗なんか、ものともしないで。
―――今は…許すけど、後で絶対に問い詰めて……やるんだから、な。
そう思ってる時点で俺の負けは決まっているのだけど。
和希は大概俺に弱い…というか甘いけど、俺も人の事は言えないらしい。
――でも…それは惚れた弱みって事だもんな。
きっとこのクイズもこうなる事を狙ってたんだろう。
でも、それが和希の願いなら、恋人として俺も出来る限り応えてあげたい…な。あくまでも俺の出来る限りで。
「かず、き…」
「ん…?」
「大好き…」
「――俺も。啓太が大好きだよ」
甘いキスの合間に、甘い甘い睦言を囁きあって微笑みあう。
こうして恋人同士限定のクイズは朝方まで続いていくのだった。
【おしまい】
オチもなく終わってすみません〜。