BL小説
□ふたつのカケラ。
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「あ…」
何かを忘れていたことを思い出した時のように言った。
「…小鉄さん、さっき言ったこと本気ですから」
いつものように、にっと無垢な子供みたく笑いながら。
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出動から戻り、交代を終えて久々の休暇になった俺と大口はいつも隊員達と飲みにいく馴染みの店に来ていた。
「小鉄さんと俺だけって珍しいですよね―」
半分も無くなった日本酒を片手に持ち、傾けて遊びながら言う。
今日は他の隊員は居なく、二人だけだった。
「それは俺にしか声かけなかったからだろ」
そうっすね、と肯定してから酒を口に含んで一気に飲み干す。
クラリと一瞬眩暈がした。
「オイ…潰れたら官舎まで担がねぇといけねぇから程々にしろ」
「えぇー介抱してくださいよぉ」
ワザとムスッとした表情をしながら言い、小鉄が呆れたように小さく溜息をつくと、笑って冗談ですよと言った。
丁度通り過ぎた店員を呼止め、酒とつまみを追加した。
「ねぇ小鉄さん、今日何で他の人に声かけなかったかわかる?」
突然言い出されたことに知るわけねぇと思いながら大口の方を見ると、真っ直ぐな目とあった。
「やっぱりわかんないよね。小鉄さんのそういう所も好きだけど」
鈍いよねと言われた気がして、イラっとした。
「他人の考えてることなんてわかるワケねぇべ」
「…だよね、知られたら困るし。小鉄さんのこと好きだっていうことか」
特別な意味が無いように自然に言われ、小鉄は気色悪ぃこと言うなと言い返した。
「小鉄さんひでぇ―」
ケラケラと笑いながら言っていると、店員が酒とつまみを持ってきた。
酒の席のただの酔っ払いの言葉。
大口は取り留めの無いことや、誰かの面白おかしい話をして小鉄はたまに笑いながら聞いていた。
ふと時計を見ると12時を過ぎていた。
そろそろ帰るか、と大口に言って残っているつまみ一口食べ、酒を飲んだ。