BL小説

□めぐる。
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あれから大口は何も無かったようにしている。
酔っ払ってからかって言ってきただけなのだろうか。
だが、悲しそうに忘れてと言ってきたのが気になる。いつもなら笑って言うに違いなかった。
ぐるぐると所々曖昧な記憶を辿る。

「小鉄、大丈夫?」

高嶺さんに声をかけられて気がついた。
どうやらいつの間にか考え込んでしまったようだ。

「なんや小鉄、俺の話は聞きたないちゅうことか。
ええで、その代わり茶いれてくれへんか?」

にっと笑顔を向けられ、焦りながら謝罪をして給湯室に向った。

嶋本以外の隊員は慈悲の目でその姿見つめている。

「…ヒデェー」

「…嶋本さんヒドい」

「…嶋、何も話して無かったよね」

「…小鉄さん可哀想」

「お前ら口そろえて言うなや。
別にええやないか、茶飲みたくなったから頼んだだけやし」

椅子の背もたれに寄掛かって、批判が飛び交う中当たり前のように座っている。
人数分のお茶を持って配りながら嶋本の所に行き、受け取りながらにやにや笑う嶋本を不気味に思いながらも席に戻って仕事を再開した。

「小鉄さん、ぼーっとしてるけど大丈夫?」

心配してくれていることの原因となっている大口がコップを持ちながら近寄ってきた。
俺が気にしすぎているだけなのだろうか。
普通振られたら明るく振る舞えない。
しかもその相手は仕事場が同じで、男、同性なのだから。

「小鉄さ―ん?」

酔っ払って言っただけで、それに対する俺の反応が悪かったからか忘れてと謝ったのか?
眉間にシワをよせて考える。

「…のせいだ」

「え?」

無意識のうちにぼそりと呟いた言葉に驚いた大口の声で我にかえる。

「あ、いゃ、大丈夫だ」

仕事に集中が出来ない、今考えるのはやめよう。

「今なんて言ったの?」

首を傾げて問いてきた大口に戻るように促した。

一度切り換えると決めたら簡単だ。
仕事柄めりはりをつけないとやっていけないため、切り換えるのは慣れている。
パソコンに向かい、遅れた分を取り戻すためにいつもより早く仕事を片付けていった。
しかし、そのためか気が付かなかった。

自分の中にあるカケラの存在、大口に対する恋心に。










(2007.0810)
 

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