頂いた宝物

□干し柿隊長と、
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白い。空も、地も、私も、貴方も。

「どないしたん?外見たって、ここには何もあらへんよ。」

「うん、だから。だから、綺麗だなって思って。」

変な子、そう言ってギンは私と同じように外を見つめた。数秒して、分からへん、とか、何がいいん?、とかぶつぶつと呟き始めた。無視して景色を眺めていたら、ギンが拗ねた。おもわず笑いそうになったけど、堪えて景色に意識を戻す。
ギンにはたぶん、難しいだろうな。芸術センスとか、趣味とか、悪いし。まぁ、十二番隊の隊長さんや、ザエルアポロよりはマシだけど。あ、感情とか心臓もなさそう。過去とか性格とかに、かなりの問題があるし。

「全部、聞こえてるんやけど。言葉が口からこぼれとるよ。」

「幻聴だよ。」

「…ほんま、失礼な子。」

ここに居る人たちは皆、強い。でも肉体的な意味の強さしか持っていなくって心は本当に、脆い。何かきっかけがあればドミノみたいに崩れていく。ギンもきっとそうなんだろうな。笑っていつも誤魔化して、何を心に思うんだろう。そもそも、私はどれだけギンのことを知ってるんだろう。自分のことを話す人じゃないし、気付いてほしがる人間でもない。知りたいんだど、見えない境界線みたいなのがあるようで、入っちゃいけない気がして、聞けずじまい。狡いなぁ、ギンは私のこと、全部知ってる癖に。
迷路みたいだ。無数に道が別れて走っても走ったもたどり着けない。たどり着くためのヒントさえ貰えない。もっともっと愛したいのに、もっともっと愛されたいのに。きっとヒントを貰っても、私はたどり着けない。

「独りで歩くからや。」

「え、?」

「独りやないから、余計なこと考えんと頼ったらええねん。」

どこから声に出してしまってたんだろう。分かりにくいけど、困ったような、呆れたような顔をしてギンが笑った。

「好きやから。」

抱きしめられた瞬間、溜めてた涙が一気に流れ出した。頭を撫でられて、止まらなくなる。歩いていけるかな、差し伸べられた手を握ったら、いつかは全てを知れるかな。何もかも全て二人で共有して、戻ることが出来ないくらい深く繋がっていれるかな。

「あ、そや、忘れとった。」

「え、な…」

一瞬ギンが消えて、すぐに現れた。腕の中にはたくさんの干し柿があって、ギンは今まで見たことないような笑顔で笑った。状況が把握できなかったから、とりあえず殴った。だって何で干し柿?こんなタイミングで。

「すごい痛かったんやけど。せっかく誕生日プレゼント用意したったのに悪い子にはあげへんで?」

「誕生日に干し柿…。」

「嬉しいやろ。誕生日に干し柿いっぱい食べれんねんで?」

呆れて、もう笑うしかなかった。さっきまで私を慰めてた人とほんとに同一人物だろうか。でも、なんだかちょっと勇気が出た。歩いていける気がして嬉しくなった。ほんとに、好きだよ。愛してる。言葉にはできないけど、狂おしいほど愛してる。


白い


≫土下座します。ごめんなさい。なんか誕生日あんまり関係ない。しかも甘くならない。砂糖たっぷり入れたのに甘くない。





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