満月と明星
□序章
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“……の子よ捜してくれ、世界の災厄を…”
『(誰…?)』
“護ってくれ…大切な……”
―
――
『ん……また、あの夢』
フィナはベッドから起き上がって汗で貼り付いた髪を払った
「クゥン…」
『あ、ごめんね…起こして』
窓際で丸くなって寝ていたラピードが心配そうにフィナの元にやって来た
『また、見たの…知らない男が何かを伝えようとしている夢』
今の夢はよく見る不思議な夢
会った事も聴いた事もない男の声が何かを伝えようとしている…それだけの夢
『ユーリはまだ帰って来てないんだね…』
一週間前…
ユーリとフィナの住む下町に税の徴収に来た騎士団
徴収にしては乱暴すぎるやり方にユーリは手を出し捕まってしまった
『(私も一緒にいたのに、何もできなかった…)』
「ワゥ」
ラピードは前足をベッドに付いて座っているフィナの目の高さに立った
『…励ましてくれてるの?』
「ワン!」
まるで“心配するな、元気出せ”と言っているかのように応えるラピード
『ありがとうラピード。そうだよね、大丈夫だよね』
「ワン!」
もう一度力強く吠えて前足を戻したラピード
『二人で待ってよう、ユーリが帰って来るのを…』