白春×機関銃

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ーもし、あの出会いがなければ私はずっとこの戦場に立てなかったのかもしれない


だが一つ言えるとするなら…




あの出会いは恋愛でも運命でも何でも無いにしても、同じ職場の人との出会いでは最悪だった…






ーー




『(えっと、このカルテを小児科の先生に届けるんだよね)』



ー此処、星白総合病院に就職して間もない頃

いつものように勤務していたら先輩看護師に呼び止められ、カルテを渡され届けるよう頼まれてしまった


『(私、子ども苦手だからなぁ…)』


せめて泣いてる子どもにだけは会いませんようにと心の中で祈りながら私は小児科に向かった

だが…


タタッ
「あ、こら!、翔!」
「きゃはは」


目的地の方から子どもが廊下を走る音と保護者の声を聞き、私は次に嫌な子どもの行動に嫌気が差した


『(一回出直したい…、でもカルテは早く届けないと駄目だし)』


私は意を決して足を進めた

すると勢いよく曲がって来た男の子が見え…


『!?』


ドン…
「わっ!」


止まる間もなくぶつかってしまい、私より体重が軽い男の子は跳ね返り身体が後ろに傾いた


『あぶな…っ!』


私は咄嗟にカルテを手放し、男の子の腕を引き、抱き締めたまま後ろに尻餅を付いた


『イタタ…っ』


硬い床が地味に痛いが、子どもが怪我する(泣く)ことに比べれば問題ないか

なんて思っていたら…


ピラッ
「あ、イチゴパ◯ツだ」

『……え』


突然の不適切な言葉に思考が停止し、機械のようにギギッと首を動かし男の子を見る

するとスカートタイプのナース服が反射的に掴んだ男の子の手によって捲り上がっていた


『ひっ、見ないで!?』

バシッ
「痛っ!」


此方も反射的に男の子の手を払うと、痛かったのか男の子は涙を浮かべる


『(いや、泣きたいのはこっち、じゃなくて…私、下着しか履いてなかったの…!?)』


勤務を始めて約三時間、初めて気付いたこの失態に私は放心状態だ



「ほーら、泣かないで、大丈夫だよー」


スッと横から現れた白衣を着た男性が膝を折り男の子の目線に合わせ、そう言った


『え…?』


アイドルスマイルと言ってもいいくらいの爽やかな笑顔に私は驚きを隠せなかった


「ぐす…っ、お、ねぇちゃんが、叩いた…っ」

「そっか、何処を叩かれたのかな?」


優しく問い掛ける先生に男の子は少し紅くなった手の甲を見せる


『ご、ごめんね、びっくりしちゃって…』

「うん、大丈夫。少し冷やしたらすぐに治るよ」


そっと手に触れ、触診する先生がそう言った


「翔!、え…っ!」

「あ、こんにちは。翔君のお母さん」

「あ、こ、こんにちは…、緑先生」


男の子が来た角から母親がやって来て緑先生と呼ばれた隣にいる先生が微笑んだ


『(緑先生、って確か…

……小児科の先生じゃん!!?)』



ーこれから会ってカルテを渡そうとしていた相手に子どもを怪我させた場面を目撃されたー!!


私の心の中は真っ暗な未来でいっぱいになった



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