白春×機関銃

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ーあれから一週間

いつものように勤務しているが、日常に迷惑な出来事が一つ増えた



ー朝ー

「美緒、緑先生よ。今日もカッコいいよね」


ー昼ー

「ほら緑先生よ、相席しに行きましょ」


ー退勤ー

「緑先生と一緒に帰りましょう」


毎回毎回同僚が緑先生を見つけては声を掛けようと私を巻き込むのである


『あのさ…、緑先生のことが好きなのは分かったから、これ以上私を巻き込まないで…』


緑先生と目が合うだけで何かされそうで恐い私はいつも緊張が走るので精神が限界だ


「好きじゃないわよ、憧れはあるけどね。美緒の恋を応援しようと思ってるだけよ」

『は?』

「この前緑先生の話してたでしょ?、よくよく考えれば美緒が現実の男の話をするなんて初めてだったから恋したのかと…」

『んなわけない!、断じて!、むしろ逆!!』


何をどう取ればそう解釈出来るのか私は我慢出来ず盛大にため息を溢した


「えー、いい人だと思うけどなー、現実に無頓着な美緒と完璧な緑先生、お互いの長所や短所を埋めていける気がする」

『ねぇ、完璧って言った時点で私には短所しかないよね』


無頓着で悪かったねと拗ねると同僚は謝った


「何だ恋じゃないのか…」

『何でそんな落ち込むの?』

「そりゃ心配だからに決まってるじゃん!、婚期を逃せばずっと独り身よ!、孤独死よ!」

『病院で何を言ってんのかな、この人は…』


呆れて物を言えずにいると何か言われたが私は聞き流して先に帰ることにした…





ーー




「あれ、奇遇だね坂本さん、今日はもう上がり?」

『……』


私は何も言わず倒れるように壁にもたれた



ー神様酷い!!

同僚を置いていった罰ですか?!

知ってたら同僚にご飯奢って運気を上げたのに…



私服の緑先生、いや緑にばったり出くわしてしまい、私は神様を恨んだ


「おーい、坂本さーん」

「緑さん、その人知り合いっスか?」

「あ、そうか、ふじもんは会うの初めてだったね。ここの看護師の坂本美緒さんだよ」

『どうも…』

「初めまして、研修医の藤本高虎っス」


長身の藤本と目を合わせて挨拶を交わすが、まだ立ち直れず私は再び壁にもたれた


「何かあったんスかね…」

「さぁ、何だろうね」


心配の視線を送る藤本に対し、ニコニコしている緑


「そうだ、坂本さん、この後予定はある?」

『…昼と夜の食料調達と趣味に没頭する予定があります』

「うん、暇なんだね。ちょうど良かった」



ーあれ、暇人扱い…?



「今からふじもんと行きつけのお店でランチと前に言ってた趣味をしようとしてたんだけど

一緒にどうかな?」

『趣味…?、あぁ、結局内緒で終わってたアレですか?』


そう、結局私の頭はそれどころではなく、彼も私を苛めるのに夢中で終わったのだ


「うん、一緒に来たらアレの答えが分かるよ」

『一緒に来ないと教えない的な言い方ですね…』

「んー、そうだね。ついて来るまで教えない」


小児科の先生の影響か子どもに語る口調の緑に私はムッとした


『別に知りたくなっ…くもないですけど』


出会いからここ一週間で緑を学習した私は言い切るのは止めて言葉を濁した


『(危なかった…、今のは危なかった…っ)』


片手で胸を抑えて安堵する


「あはは、何安心しきった顔をしてるのかな?」

『!?、ふぇ!?』


突然掴まれた手にハッとして顔を上げると、そこには私の手を握る緑の手と笑顔の緑


「じゃあ行こうか」

「行くっス」

『えぇぇぇぇぇ?!、ちょっ!、これ、連行じゃ…っ』

「何か言ったかな坂本さん?」

『……』


学習が裏に出て笑顔全快の緑の手を振り払えなくなった私は現実逃避をしながら彼らについていった…



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