狼×私SS
□第六話
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「珠狼神さん、お話があります」
御狐神は停まっているエレベーターの階を確認し、そこへ向かって部屋に入ろうとしていた奏朶に声を掛けた
「…ストーカー」
首だけ振り返りボソリと言ったが一応驚いている奏朶
「そう思っていただいて構いません。…ただ少し気になったので」
嫌な顔一つせず微笑んだまま御狐神は奏朶の前に立った
「刀を交えた時にわかりました。貴方は理性を失うほど血の気の多い先祖返りですね」
「……」
奏朶は振り返って御狐神を見たが、左右の色が違う珍しい目に引き込まれるような不思議な感覚がした
(これで二人目か…)
“奏朶様、夜に外へ出てはいけません
強い妖怪に出会えば理性を失う危険があります
大人になるまでの辛抱です”
(ガキの頃を思い出すのも久しぶりだな…)
記憶の奥に蓋をしたモノを思い出したような気持ちになる奏朶
「夢神詩さんに話さないのですか?」
「…話す必要性を感じない」
「そうですか…ですが、もし僕が同じ立場だとしたら…
知られる前に自分の言葉で全てを打ち明けます」
迷いなく真っ直ぐな言葉を言うとお辞儀をして背を向けて引き返す御狐神
(…肯定してなかったはず……アイツ、黒だな…)
気付いたら御狐神の言質に流され、挙げ句の果てに助言まで与えられた事に苛立つ奏朶…