迷宮リセット

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ーもし見えない恩返しをして姿を消したら貴方は私をどう思いますか?

怒りますか、それとも恨みますか?



『…もう、決めたから……だから…』



ー手紙を書くのは最後にするね、お母さん…


封をした手紙をそれで山ずみになった引き出しの中に入れて閉め部屋の明かりを消した…



ーー





『もしもし、お姉ちゃん?』「璃緒〜っ…どうしよう、私、やっちゃった…」


朝、何気なく携帯を開いていると着信画面に変わり、アドレス帳に登録している知ってる人なので通話ボタンを押し声を出すと、何とまぁ情けない声が聞こえてきた


『え…、どうしたの?、何があったの…?』

声から察するに恐いことに遭ったのだろうと考えつつ落ち着いて問いかける

「…いちゃった…」
『え?』

「男の人ひいちゃったの」

『ひいたって…?』


楽器が頭に浮かんだが、男の人というのだから違うのだろう

他の意味があるとすれば…


「急いで救急車呼んで同行したんだけど、その人意識が戻らないの…っ!」
『え!!?、…まさか、車で…っ!?』

「えぇ、お医者さんが言うには軽傷で命に別状はないみたいだけど、不安で…っ」

『っ、わかったすぐ行く!、何処の病院?!』
「!?、ありがとう…っ!、ーー病院よ」


場所を聞いて通話を切ると私はベッドから起き上がりスウェットを着替えて家を出た


『(“明美さん”、運命の相手をひいたんだね…)』


漸く動き出した過去編に私は気合いを入れるため走った…




ーー




コンコン
『お姉ちゃ…っ』


病院に着いた私は明美さんから聞いていた病室を開けた


「君は…?」


そこには明美さんの姿はなく、明美さんがひいたであろう男の人がベッドに寝たまま此方を見て声を発した

見知らぬ私を鋭い目で見てくる彼と視線が重なる


『(ロングヘアーの赤井さんだ…っ)!!?、すみませっ、間違えました…っ!』


合ってはいるが、明美さんのいない病室に入る勇気がなく私は慌ててドアを閉めた


『(びっくりした〜…!?、もう意識戻ってるなんて…)』


そもそも事故の原因は明美さんではなく彼がわざと車の前に出たせいだ

ぶつかる寸前に持ち前の身体能力で衝撃を軽くしたのだろう


『(にしてもタイミング悪すぎ…っ)』

何でいないのよ!!と叫び怒りたい衝動に陥ったが何とか堪え、やってしまった恥ずかしい行動にへなへなとドアを背に座り込んだ


『(……赤井さん、いや、今は諸星大だっけ…////)』


決してミーハーではない(はず)だが、一瞬見ただけでキャラクターとして好きだった心が蘇った


「あ、璃緒!、来てくれたの」

『お姉ちゃん…っ、相手の病室…』


ここで合ってる?の意味をこめて指を揃えて指すと明美さんは頷いた


「ついさっき意識が戻られてね、お医者さんを呼びに行ってたの」

『……そぅ』


あんな恥ずかしい思いをした後に顔を会わせるのはかなり気まずいが、明美さんは逃がしてはくれなかった


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