迷宮リセット

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ーー



ー毎週月曜日の23時

それが組織と電話で連絡を取る時間帯

そして今日がその月曜日

私は自室に籠り、非通知を待つ



『(そういえば赤井さんは組織の内情を知るために明美さんに近付いてたはず

だとしたら彼は物語にいない私をどう認識しているんだろう…?)』


悪いように思われてないと良いけどと思っていると時間になり携帯が鳴った


『はい』

「…知らない番号に出るとは随分無用心だな」
『!?、え…っ!』


聞こえてきた声は変声機をしていない聞き覚えのある男性の声で私は驚愕した


ーなんで、何で貴方が私の番号を…、それに何で時間を知って…!


「何故番号を知って、この時間にかけたのかと、驚いているようだな」

『……っ、(まさかこの人、私の携帯を…っ!?)』


気絶している間に携帯を開き情報を見たのではと焦る私に対して彼は…


「君の姉から番号を聞いたが途中で電源が切れてしまったんでね」
『は…っ?』


予想もしなかったらしくない失敗をいきなり語るので、私は再び目がの点になった


『(そういえば“非通知”ではなく“知らない番号”と言っていた気がする…)』


焦って損したのと画面をちゃんと見なかったことに後悔しため息を付いた


『…この時間に掛けたのは充電ができ、お風呂から上がって一息ついたからですか』

《あぁ、察しがいいな》

『(この人、意外に抜けてる…っ)』


口には出せないが呆れる私の返事はなく彼はどうしたと言ってきた


『いえ、初めてだな、と思って…、貴方とこんなに話すのは』

《そうだな…、私としては君とも仲良くしたいのだがな》

『本当ですか…?』


ーちがう、彼は利用できる情報提供者として誘っているんだ

私の目的を考えるなら乗る方がいいのだが、罰当たりにも素直に喜べない


《あぁ、年の離れた異性と馴れ合うのは嫌か?》

『そんなことないですよ、慣れるのに時間が掛かると思いますが…』

《なに、ありのままの君で接してくれればいい》

『ありのままの私で…』


ー嘘偽りのない私なんてこの世に存在するのだろうか?


『…難しいですね』

《そう深く考えるな。今思ったこと、考えたことを行動に出すだけでいい》
『……』


優しく教えるように話す諸星さんの声に牽かれるように耳を傾けている


ーこれが本当の私なのかな…?


まるで自分を偽っていた壁が溶けていくようで、温かくて携帯に頭を預けた


『…何だか安心します、よく眠れそうです』

《ホー…、人の声を子守歌に代用するとは》

『……駄目ですか?』

《…複雑だな……》


言われたのは初めてなのか微妙な返しをする諸星さんに私は笑みを溢した


それから他愛ない話を数分した


《…そろそろ切るか、夜も遅いことだしな》

『そうですね、楽しいですが今日はこの辺で。番号登録しておきますね』

《あぁ、おやすみ…》
『おやすみなさい』


通話を切り、私は諸星さんに言われたことの余韻に浸るようにベッドにダイブしゴロゴロと動いた


『(どこまでカッコいい人なんだろ…っ)』


あれが演技にしろ、そうでないにしろ心臓に悪くて質が悪い


『(諸星さん…、赤井さんも頑張っているんだ。私も…)』


ー奴らの言いなりになるだけで終わらせはしない…!


再び鳴り響く携帯を取り、私はベッドに座り直して通話ボタンを押した…


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