迷宮リセット

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ー世の中というのは私が何かをしても、しなくても動き続けている

独りが動いている間にも誰かが動いている


いずれも見えない所にいれば何をしているのか分からない

だが、それはお互い様

そこに裏切りが生じるのなら、見切れなかった自分を恨めばいいと非情な事を思ってしまう


『ジン、ウォッカ、ベルモット、キャンティ、コルン…』


ー貴方達に見せてあげたい、そんな景色を…




ーー




『お姉ちゃん、口紅持ってない?』

「え?、持ってるけど、璃緒はまだしなくてもいいんじゃない?」

『今日は友達の家でファッションショーするから化粧もするんだ』


いつもより大人っぽい私服を着て明美さんに見せる

明美さんは笑って口紅を取りに行った


「いいなぁ、お泊まり会。私も行きたいなぁ」

『じゃあ今度の連休に行こうよ』

「そうね、じゃあ課題が終わった頃に行きましょう、志保も連れてね」

『うん、行こう。三人で…』


口紅を受け取りそう告げると明美さんは憂い顔で笑った


『…じゃあ、行ってくるね』
「行ってらっしゃい」


ーいつか、本当の笑顔で守れる約束ができる日が来ればいいのに…


街並みを歩く私はそう思わずにはいられなかった


『……』




ーー




“はい”

“誰と電話していた?”


変声機を使って少年のような高い声でヤクザのような喋り方をする電話の相手

誰と言われて頭に過るのは赤井さん…


“…学校の友達と少し…、休みに出掛けないかっていう誘いがきたの”

“当然、断ったよな?”

“勿論、そこまで馬鹿じゃない。私は貴方達以外に優先することなんてないから”

“そいつを聞いて安心した。流石は悪魔だな”

“…好きに呼べばいい”


ー皆を見殺しにしたのは本当のこと

言い訳する気はない



“上からの指示でお前を連れてこいだとよ”

“!?、そう…っ、それはいつ?、標的に気取られるのは避けたいのだけど”


今までにない指令に驚いたが平静を装い話を切り出す


“安心しろ、次の土曜日だ。友達とやらの家に泊まるとでも言って出てこい。その間の見張りは手配ずみだ”

“了解”

“場所は追って知らせる、じゃあな”


プッ、ツーツー…


“……”


通話の切れた携帯を持つ手は力んでいて、下ろせずにいた


“……ハァーーー…”


グルグルと一日で起きた色々なことが駆け巡り私は大きく息を吐いた所で漸く通話を切る


“あーぁ…、登録、し損ねたなぁ…”


ー本当、愚痴を吐かないとやってられない…



ピッピッ

画面に映るのは《この履歴を削除しますか?》の文字


“……バイバイ”


ピッ


私は折角もらった、彼からの着信履歴を削除した


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