迷宮リセット

□02
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一人になってから数分、流石にじっと布団の中にいるのも暇なので私はベッドの下に足を着けた


『よっ……いっ…しょ…』


掛け声と一緒にゆっくりと立ち上がり色々な部分を庇いながら変な歩き方をして、鏡の前に立つ


『うはぁ…っ、これは酷い…っ』


パンパンに腫れた顔に首元の痣、パーカーの袖を捲れば昨日よりも薄く広がった痣だらけの腕に私は圧倒した


『(お腹はもっと酷いだろうな…)』


息を呑んで上の服を全部捲し上げると赤紫色に大きく広がる痣が姿を見せた


『(これを見られたんだよなぁ……)』


不覚にも怪我をしていることがバレてしまい、このお腹を晒されたことを思い出して火照りながら頭を抱える



“こうしても痛みはないか?”


『(骨のチェック、をされたんだよね…さすがFBI…)////』



ー正直ありがたかった

私の身元や戸籍はどうなっているかなんて分からないし、組織の一人である以上、病院なんて行けば足跡が付き裏切り行為になってしまうと考えていたから

それに組織に医者がいることは知っているが、組織に染まっている奴らになんて見せたくなかったから


『骨に異常がないならこのまま安静にしておけばいつも通り過ごせ…?』


ふと、何か大事なことを忘れているような気がして思考を巡らせた



ーいつも通り…

あれ、私…っ、昨日…



『っ!!?(組織とのメール…!?)いっ!?』
ドタッ!

忘れていたことを思い出し慌てて携帯を探そうと身体を捻ると痛みが走り、音を立てて床に膝を着いてしまった


『っ〜…!(マズい…っ!、一度でも裏切れば奴らは抹殺に動く…、早く携帯を…)』


床を這いつくばり、ベッドに手を付きシーツを握りしめながら全身に力を入れて膝を立たせる


トッ、トッ
『!(まさか、明美さん…っ!?)』


足音が聞こえ、明美さんが来るのではないかと焦り息を殺してドアを見た


「…何をしている?」
『あ…っ、何だ、諸星さんか…っ』


ドアが開くとそこにいたのは諸星さんの方で、安堵した私は携帯探しを再開しようと立ち上がることに集中する


「何だとは随分だな」

『今ちょっと手が放せないんですっ、大事な用を忘れてて…っく!』


机の上を見ようと立ち上がれば痛みに意識を占領されてしまいフラつく


ガッ
「落ち着けっ、ひとまずベッドに座ってからにしろ」


慌てて私の身体を支え、ベッドへと誘導し座らせる諸星さん


『携帯を…っ!、早く連絡をしないと奴らに…っ』

「!(奴らに連絡…っ)」

『最後に使って何処に置いたか…っ』


向かい合って立つ諸星さんの前で頭を抱え必死に思い出す



ーそういえば、家に帰ってから

いや、あの日出掛けてから携帯に触っていない


『バッグ!、バッグの中にっ!』


そこにあると踏んだ私は、部屋にあるはずのバッグを探し始めた


「だから落ち着け」

『落ち着けないですっ!、明美さんと妹の命がかかって…っ!?』


そこまで口走って私は目の前にいる人物が誰であるか思い出し口を塞いだ



ーしまった…っ!!?

私…っ、今…っ!



これでも長年組織の下っ端としてやってきたのに、易々と組織との関わりをバラしてしまった失態に青ざめた


「だから落ち着けと言ったんだ…」
『っ……!』


口角を上げる彼に身体が震え上がった



ー彼はFBIで組織のスパイ

根本的には味方だが、私を疑っているなら私の目的を組織にバラしてあの方に近付く算段でくる

そうなれば私はいなくなり、明美さんが不審に思う

そうなれば…!




『ハッ…!』


伸びてくる彼の手に私は呼吸を忘れ目を見開いたまま固まった



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