迷宮リセット

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ーいつだったか、少なくても私にまだ羞恥がないくらい小さい頃

お母さんと二人で百合の花を見に行った…



“どんなに踏まれても嵐に打たれても懸命に生きて花を咲かせる

そして、アタシ達人間に感動と笑顔と希望をくれる

あの人と此処でデートした時、お母さんもそういう人になりたいって思ったな”


大好きな百合の花の前でお母さんが昔を懐かしむように語った


“じゃあ、その夢叶ってるね”

“えっ、ホント?”

“うん、お母さんは充分私にたくさんのモノをくれてるよ”

“璃緒〜!”
“もぅ、お母さんっ”


力いっぱい抱きしめて頬をスリスリしてくるお母さん


“だってー、嬉しいんだもん!、もう離したくないっ!”

“ひっつき虫みたいだね!”

“えっ、花じゃなくて虫呼ばわり…”
“?”

大袈裟に傷付くお母さんに私はきょとんと首を傾げた


“私もなりたいなぁ、お母さんみたいに”


ー自分の為だけじゃない

誰かの為に生きて、笑顔と希望を与える

そんな人に私もなりたい…




そんな想いを籠めて言った幼い私にお母さんは涙を浮かべて笑った…





ーー






「璃緒、もう熱は下がったの?」

『うん、おかげさまで!、すっかり元気になったよ』


制服姿でリビングに来た私に笑顔で声を掛けてくれる明美さん



ーあれから数日、日常生活に支障が出ないほど回復した私は今日から学校に登校することにした



「諸星さんがいてくれたおかげね。今度、何かお礼しないとね」

『え、あ、そうだねっ////』


名前を聞いて頭に浮かんだのは恥ずかしい出来事で私は顔を扇いだ



『(本当、寿命が縮まるくらいに心臓に悪い数日だった…)』



ー大学のレポートで忙しい明美さんに代わって、組織の潜入捜査で忙しいはずなのに諸星さんがあの日以外にも時間があれば来てくれた

そのおかげで明美さんに怪我のことはバレてないし、ゆっくりできて回復も想像より早かった



「あ、そうだ。来週の土曜日だけど空けといてね」

『?、うん、何かあるの?』

「志保がアメリカから帰って来るのよ!」
『えぇ!?、嘘っ!』


ビッグニュースに私は驚きながら喜んだ


「本当よ!、久しぶりに会えるのよ!、また大きくなったかしら…」

『(嬉しそうだな、明美さん…)』



ーやっぱり姉妹は傍にいるべきだよね…



「美味しいご飯食べに行こうね」

『うん!』


笑って頷くと明美さんは先に大学に行くと言ってリビングを後にした


「あ、そうそう、お友達の傘玄関に置いてるから今日にでも返すといいわ」

『あ…(工藤君の傘…)、うん、持っていくよ』


すっかり忘れていた借り物の傘と、その持ち主に私はヤバイと冷や汗を垂らした


「じゃあね!、気を付けて行くのよ!」

『お姉ちゃんもね!』


明美さんを玄関まで見送りバタンとドアが閉まると私はため息を付き頭を抱えた


『…返さないと駄目だよね』


そのまま家に置いておくという悪魔な思考を振り払うように私は首を振った


『でもどうしよう、工藤君の家の住所は原作で覚えてるけど、それを頼りに行ったら不審者だし…』



ーそれに学校が終わってから小学校に行ってもすれ違って会えないかもしれない


『かといって今日返さないと明美さんに不思議がられるし…』


どうすべきかなぁと悶々と考え、結局私は登下校に賭けることにした



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