main〜if-you-need〜
□生徒会企画 編
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Side 咲矢
*9時10分*
開始から10分。集合場所での狩りが終わり、ドロボー役が宝探しに校内を走り回っている。
校舎を全力で走るなんてなかなかできない体験だからか楽しそうにしている面々が多い。
一部の必死な奴等以外は。
「っ」
放送が終わって早々に俺はちっさい生徒に追い掛け回されていた。
正直、イベント事を舐めていたのは否定できない。開始10分にして俺は今にもぶっ倒れそうなくらい疲弊していた。
今回、運動部をケーサツ役に回したから多少は楽が出来るなんて考えていたさっきまでの自分を叱責してやりたい。
恐らく親衛隊の奴等の人海戦術によって俺は早くも追い詰められていた。
疲弊し切って、とにかくどこかに隠れて休みたい。
そんなことを考えていた時、俺は不意に腕を引かれた。
疲れていたせいか、簡単に引っ張り込まれたのは空き教室の一つだった。
「お前は……?」
俺を捕まえたのは眼鏡をかけた細身の男だった。
「2年の報道部員です」
「げ」
「まぁそんな嫌な顔しないでください。俺たちはこのイベントを面白おかしく引っ掻き回すために動いてるだけなので今会長を捕まえる気はありません」
「……」
面白おかしく引っ掻き回されちゃたまらないのだが……。
というか、報道に借りなんて作るくらいなら捕まった方がマシだ。
「まぁそんな渋い顔しないでください。イベント序盤に会長が親衛隊に捕まるなんてつまらない展開は記事にならないってだけですよ」
「……」
「鍵は閉めましたから適当なとこで逃げて下さいね、それでは……」
そう言って男は窓から出ていき、俺はソレをただ見送った。
男の言う事は分からなくもないが、少し腑に落ちないことがある。
俺を追っていた親衛隊員たちは本当に俺を捕まえる気があったのか。
ある程度本気を感じたが、もしも本当に本気だったなら俺はとっくに捕まっていただろう。
そして、親衛隊が人海戦術を使うならリーダーである隊長が指揮をとって動いており誰かが美味しい思いをするような展開にはしないハズだ。
つまり、俺は適度に泳がされていた。疲労は溜っていたのでありがたく休ませてもらうがわざわざ報道部員に助けてもらわずとも先ほどの生徒が言っていた様なつまらない展開にはならなかったハズだ。
あの生徒が分かってて敢えて貸しにしたのか、分からずにやったのかは俺には分からない。
しかし、報道部の部長の顔が脳裏を掠め俺は大きくため息をついた。
「こんなクソみたいなイベント考えて承認したの誰だよ」
承認したのは俺だ。
そして今回のイベントの発案者は……。
「村海、今度殺す……」
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