はつ恋
□第1章
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私は絶句していた。
引退時に『毎年会おう』と約束していたのだが、ここ数年多忙だった私は参加していなかった。
それが、今回は私の職場の傍であり、終わった後に来いと親友が強く言ったのだ。
「あの、お代を貰う前に皆さん眠ってしまって……」
「‥凛ちゃん、私が払うわ」
ウエイトレスの凛ちゃんに言った。
皆、お酒に弱いとは知らなかった。
「……凛ちゃん、運ぶの手伝ってくれない?」
「ええ、いいですよ」
凛ちゃんは最近隣りに引っ越してきた女の子。
来月から新しい会社で働くまで、友人の飲み屋を手伝っている。
しかも、私と同い年に驚きを隠せなかった。
「凛ちゃん、迷惑かけてごめん」
「いいんです。あずささんのお陰で楽出来ました」
凛ちゃんは、昔からの癖で敬語が抜けない。
まぁ、一つの特徴だと思っているけど、それに礼儀正しいか。
「菜月ちゃんに連絡取りましたか?」
「あ、忘れてた。凛ちゃん、お願い」
「はい、わかりました」
助手席に座っている凛ちゃんは携帯で私の自宅に連絡を取る。
菜月のことだから、きっと起きている。
夜起きていることに慣れているはずだから……。