発車を告げるアナウンスをまるで無視するように、大吾はゆっくりホームへの階段を下っていた。
「また終電か・・。」
少し急げば乗れただろうが、大吾はあえてそうしなかった。
*ごめん。また終電だ。*左手に握った携帯で、慣れた手つきでメールを送ると、
ホームの柱に身を委ね、暖かそうなマフラーを締め直した。
左のポケットに入れていた携帯が鍵と触れあい音を立てた。
その鈍い金属音で、大吾は目を開けた。*わかりました!駅で待ってます!(>.<)*
微かに大吾の口元が綻んだ。
ちょうど目の前を、銀色の車両が駆け抜け、静かに停車した。

改札を抜けると、わき目も振らず歩き出し、純白のコートを着た宏美のもとへと歩み寄った。
「ただいま。寒かったでしょ。」大吾が心配そうに声を掛けると、
「おっかえり!ううん大丈夫!」
宏美は弾けんばかりの笑顔で振り向いた。「さぁ、帰ろう。」
大吾は宏美の手を握り歩き出した。「ほら!こんなに手が冷えてる!」
小さなその手は、とても冷たく、大吾は思わずそう口にした。
「だって、大ちゃんに早く会いたかったんだもん。」「終電なんだから、時間わかるでしょ?」
大吾は呆れたようにそう言った。「でも、ありがとう。」大吾は宏美の小さな手をギュッと握り締めた。
「あ!流れ星!」
宏美はそう言って、突然立ち止まった。
「都会でも見れるんだ。良かったね。」大吾は子どものように喜ぶ宏美を見つめながらそう声を掛けた。
「うん!大ちゃんが終電じゃなかったら見れなかったかも。ありがとう!」「そうだね、偶然だね。」
興奮気味の宏美と共に夜空を見上げ、大吾は小さく呟いた。
「また、見れるといいね。」

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