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□第一楽章:前奏曲V
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君は、知っていた。
俺の罪も、俺の消せない足掻きの後も。


生きる為の犠牲になれるんだ――

なんて美しい生き物………


****

…神奈川・古都鎌倉……―

「出て行けぇッ!!お前こそこの土地を凶作へ追い込んだ不幸者だ!」

ガツンと音を立てる扉。

砂利の敷いてある地面に僕は叩きつけられる。

『――っつ!!』

口の中に鉄の味がしてきた。
きっと何箇所か切れたのだろう。
吐き気が止まらない。血生臭い血が、口の中だけじゃなくて、体全身に染み出ているようだった。

今さっき、僕を外へ叩きつけたのは、此処の土地一体を有する農家の伯父さん。

伯父さんだって言うけど、別に血のつながりがある訳じゃない。

ただ、鎌倉の海に伸びていた僕を拾って奴隷の様にコキ使っている。

ふざけた爺だ……

重い体を起こすと、よろよろと歩き始めた。

目的なんて無い。ただ歩くだけ。

『どうして…僕は………』

爺のやってきた仕打ちが頭の中にクラッシュバックする。

水をかけられ…

殴られ……

凍える中での水仕事。

もう、沢山だ………――
気づいたら頬に雫が伝ってた。視界が涙のせいで曇る。

「おーい、悟司。また、野村の爺さんにいじめられたんだっぺ?」

「…ったく泣き虫小僧だなァ悟司は。」

村の餓鬼大将の奴らが僕を取り囲む。そんなことは、どうでもいい。

どうでもいいんだ……

餓鬼たちが、僕に向かって小石を投げてくる。
手や、頭に当たって痛い。

奴らの言葉に聞く耳なんて持たずに、ずるずると足を引きずって川の方へ歩いた。

手が、毎日のようにやらされていた洗濯仕事で、しもやけができ、真っ赤になっていた。


痛い…よ。
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