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□第一楽章:前奏曲W
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僕への愛情を見せた者は、時期に消え、この世の歴史から抹消されるであろう………
僕の目の前で涙を流す少女もまた、この世から抹消されるのだろうか?
どうして、そうやって僕を苦しめるんだ…
君もまた彼女と同じか……
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「悟司さん…何なのですか?私にはよく、事情が……」
愛実を下に組み敷いてその上にまたがる様にのしかかっている僕に愛実は問うた。
僕は目を細めてそして怪しく誘うように笑う。
『君が知れば、禁忌なのさ…僕の秘密を知るのは僕の過去を知ると同じだから。』
「禁忌……過去、秘密?」
何だか聞きなれない言葉を意味もなくボヤリボヤリと呟いてみる。
愛実にはまだ事の重大さがいまいち分かっていないらしい。
一生懸命に考えている。
『そう……パンドラの箱を開けるのと同じで……』
彼女の耳元で小さく、吐息をかけるように話しかける。
彼女は逃れるように腰をばたつかせ、悟司の下から逃げようとした。
「悟司さっ…!こんなのおかしいですよ。おかしいっ」
『黙れ!』
喝を入れるように怒鳴ると、愛実は目を見開いて、それっきり、言葉を発さなくなった。
『君は…心の真珠を持っている…完全なるマリアの糧になる力をね』
「マリア……?心の真珠って何なんですか??」
愛実が攻め立てるように聞いても、悟司にこたえる術は無い。
心の真珠の本質や、糧となる意味を彼女に答えてしまっては僕は天使に仕えるという役目に背いてしまうから。
こればかりは、僕には何もできない。
僕は無力な人間だ………