Memoria

□55:目論見と野望
1ページ/6ページ














「――――紅葉」












XANXUSに呼ばれ、紅葉はそちらを見た。
手筈通りに進んでいる。
これからも、それは変わらない。
通信端末から入ってくる声に紅葉は頷いた。
すると、XANXUSは軽く足をひき立ち上がるような動作で飛び上がると、雲雀に襲いかかった。
雲雀のトンファーがそれを防ぐが、
いつも肩からかかっている学ランの上着が、ばさりと地面へ落ちた。

XANXUSのその行動に全員が目を見開いた。
そして、XANXUSは宙を一回転し、着地した。











「足が滑った」













言い訳にしては、あまりにも無理がある。
XANXUSは不敵に笑いながらそういうと、雲雀を見た。
雲雀は「だろうね」と冷たく言うと、武器を構え直す。
どうやら、学ランは放置するらしい。
紅葉はXANXUSの背を見て、小さく拳を握りしめた。








「ウソじゃねぇ」









そういって一歩後ずさったXANXUSの足元から聞こえてくる「ピー」という警告音。
地雷の警告音が響いたかと思ったが、すぐに爆発がおき、XANXUSはそれをかわした。
そして、再び着地すると、雲雀の後ろにいるゴーラ・モスカを見た。














「そのガラクタを回収しにきただけだ。

――――オレ達の、負けだ」

「ふぅん。そういう顔には、見えないよ」















紅葉は始まった雲雀とXANXUSの攻防を眺めていた。
すると、隣から「紅葉!」と葉夜の声が聞こえてくる。
紅葉はそれにふいに視線を送った。












「い、いいの…!?
リング争奪戦、これじゃあ……」
「――――XANXUS様がお決めになられたのならば、俺はそれに従うだけだ」














紅葉はXANXUSを見た。

これが、XANXUSの野望。
これが、XANXUSの願い。
それをかなえるためならば、
悪にも、闇にでもなってやろう。

たとえ、自分の全てを壊したとしても。
















「安心しろ。
ボンゴレの精神と、紅葉を尊重して手は出さねぇ」

「好きにしなよ。
どのみち君も右京紅葉も咬み殺される」
















雲雀とXANXUSの攻防戦。
比較的攻撃している雲雀が有利なように見えるが、
全く攻撃を寄せ付けないXANXUSの動きにも見事だと言わざるを得ない。
椿はその攻防戦を眺めながら、紅葉と葉夜を見た。
ヴァリアーの中ですら、二つに割れている。
知っているものと、知らぬ者。
紅葉はXANXUSと全ての情報を共有しているのだろう。
だからこそ、今、平然とただXANXUSを眺めているだけでいられる。
普段なら、動揺というくらいでは済まないだろうに。












「おのれ〜!!ボスと紅葉様を愚弄しおって!!」
「まてよ、ムッツリ」
「ムッツリ!?」












ベルは意外と冷静だった。
きっと、XANXUSがあんな行動をとるには理由があるはずだと思っている。
しかし…
紅葉へ視線を送ってみた。














「勝負に負けたオレらが手ーたしてみ。次期10代目への反逆とみなされ、
califfaと葉夜がこちら側だったとしても、ボスともども即、打ち首だぜ」
「では、あの生意気なガキを放っておけというのか!?」
「なんか企んでるぜ、うちのボスは」
















ベルの言葉にレヴィは目を見開いた。
全く想像すらつかない。
しかし、確かに考えなくしてあんな行動をとらないだろう。
「何を……だ?」と聞いた言葉は、無残にも「知らねぇよ」と返される。
葉夜の耳は二人の会話を聞きながらも、紅葉を見ていた。
どうして、何も言わない。
どうして、何もしない。
なぜ、そこで泣きそうな顔で立っているのだろうか。
















「マーモンか、スクアーロなら…
そして、califfaなら知ってたかもね」
「……紅葉様…なら」

















二人の視線を受けても、
紅葉は微動だにもせずXANXUSを見ていた。

いつからだろう。
いつから、俺はこんなに歪んだんだろう。
こんな形でもいいと思うようになったんだろうか。

XANXUSは笑っていた。
その笑みを見るたびに、悲しくなるのはなぜだろうか。
どうして、こんなに泣きたいんだろう。
紅葉は一度、うつむいた。
すると、その隣に現れたのはレオーネだった。


















「紅葉様、例の件ですが」
「……了解した。
―――――計画通り、進めておいてくれ」


















貴方のためなら、
どんな闇に染まっても構いません。


でも………


俺は、
貴方を……












――――紅葉の思いも空しく、
ゴーラ・モスカの左目が、内部に含まれるパソコンは雲雀を捕らえていた。





























山の中に現れた、大きな光。
暖かく、包み込むような光はすぐに消えたがそれはある意味兆しだった。
リボーンも、ツナも、バジルもその今までと違う炎の質に目を見開いた。
そして、これが最終地点だと知った。













「あれ……?今……オレ………」
「やったなツナ、それが死ぬ気の零地点突破だ」
「やりましたね!!すごいですよ、沢田殿!
初代ボンゴレしかできなかった技をついに完成させたんですよ!!」
















バジルの興奮する声。
ツナは目を見開いた。
意外すぎる、技の型に驚いていた。










「これが…こんな意外な技だったんだ……
一人じゃ絶対無理だった……バジル君のおかげだよ。ありがとう…!」












一人では、絶対に無理だった。
この技はバジルがいてくれたからこそ、できたのだ。
ツナはその思いをしっかりと伝える。








(…そうだ、オレは伝えなきゃ)









紅葉へ。
伝えなければならないことがある。
リボーンはそれをくみ取ったように、「よし、ツナいくぞ」といった。
そして、ツナも頷いた。
あそこにはきっと自分の友達たちと、
紅葉、葉夜、椿が待っているはずだ。
























「行こう、並中へ」
























55:目論見と野望



























次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ