Memoria

□59:ネガイゴト
1ページ/6ページ



















「リボーン、赤外線の確認を」
「……解けてるな」

















紅葉がスイッチを押したことで、
マーモンの細工が解除されたのだ。
リボーン達は走って、ツナたちのところへ向かってきた。
紅葉は静かに微笑む。
これでいい。
これでなければならない。









「…紅葉……てめぇ」
「ありがとうございました、XANXUS様。
貴方のヴァリアーは俺にとっていい足がかりとなりましたよ」
「…!!」










こうしなければ、
こうしなければならないのだから。
笑って言うんだ。











「califfa…?何してんの?」
「見てわからないか、ベル」












紅葉は冷ややかにベルを見た。
ここまで来てわからないわけではないだろうに。
恐らくは信じたくないということか。
信じられないのだろうか。
紅葉は淡く微笑んだ。













「こんな衰弱したヴァリアーには興味ねぇよ」















はっきりと言い切った紅葉。
その表情は今までになく冷たい。
全員が、凍りついたように動きを止める。
ディーノも、ツナも、リボーンですら目を見らいて硬直した。

紅星は息をのんだ。
もし、この子の本心ならば。
この子はやはり危険だったのかもしれない。














「そして、衰弱したボンゴレにも俺は興味はない。第一、ツナみたいな弱者に仕える気はないからな」
「右京てめぇ!!!」















獄寺の怒号。
紅葉の殺気で黙った。
すると、レオーネが着地した。













「……紅葉様、ヴァリアー隊ですがご指示通り総員待機させております」
「ありがとう、レオーネ。
そして、今までご苦労だったな」
「………」













やはり、やるのだろう。
この人はこうするしか道がないと思っているのだろう。
何て苦しい。
何てつらい。
沢田綱吉よりも、
XANXUSよりも、
よほどこの人の方が悲劇だ。
レオーネは静かに紅葉の背を見つめた。
そして、ともにXANXUSたちのところから離れていく。















「葉夜、椿」


















完全に離れた所から、
紅葉は二人の親友の名前をよんだ。
そして微笑むと、もう一つのスイッチを持った。
押すのを一瞬ためらったようにした。
すると、もう二人の部下が、
レヴィとルッスーリアを連れてきた。
これで、全員がここに揃ったことになる。


















「――――今までありがとうな」



















こんな俺の親友でいてくれて。
こんな俺を救ってくれて。
二人は自分が無力だといったけれど。
俺はそんなお前たちに救われてきたんだ。




紅葉の視線がXANXUSへと向いた。
怒りと憎しみ、妬み。
それこそ、XANXUSの全て。
わかっている。
わかっていたからこそついてきた。
でも、それだけではないことを知っている。
だからこそ、紅葉は戦うのだ。



そして、ツナを見た。
弱いくせに誰よりも強さと弱さを理解している。
だからこそ、優しい。
強くなってこれたのも、これがあるから。
そして、これからのボンゴレに必要な新しい芽。
大樹になるそれまで。
みんなで守っていかなくてはならない。

















――――大地とはそのためにあるのだ。





















「さようなら…―――――」






















カチンっ


ボタンを押した瞬間に何かが作動する。
チェルベッロも知らない紅葉の仕込み。
全員をぐるりと覆う鉄格子。
上空すら塞がったそれを見て、
全員が目を見開いたのだった。
葉夜が「紅葉!!」と叫ぶ。
何が何だか、まったくわからない。
何で、こんな行動をとらなくちゃならないんだろうか。













「レオーネ」
「はい」
「……ありがとう」














背を向けて、紅葉は言った。
小さな、小さな背。
でも、誰よりも大きなものを背負う背。
決して14歳の女の子が背負いきれるものではないのに。
全てを背負って、
全てに汚れて、
全てを守り通す気なのだろう。
何とも優しい、レオーネの…ボス。


















「お気をつけて、いってらっしゃいませ。


――――ボス」



















たった一つの願い事をかなえるために。
貴方は戦うのでしょうから。






















59:ネガイゴト

























次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ