Memoria

□22:帰還
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ヴァリアー専用機内。

紅葉は黒くなった空を見つめながら、
そっとコーヒーを飲んだ。




















(眠れない)





















コーヒーを飲んでいるせいも、もちろんあるだろう。
だが、眠気が全くこない。

頭が興奮しているのだろうか。
昔の仲間たちに会うことに、
また、あの場所に戻ることに。

どれだけ憶測を立てても、しっくりとはこない。




ただ埋まらない何かを求めて、
体が目を開かせている。




そんな気がするのだ。
強く、痛みすら覚えるこの感覚を
自分は知っているような気がして。



















「紅葉」
「あ、起きていらしたんですか」





















XANXUSが横から紅葉に話しかけてきた。
酒の香りが、その服からはした。
おそらくは機内のバーにでも行っていたのだろう。



紅葉はうずくまっていた毛布を軽く解いて、XANXUSを見た。
















「どうかなさいましたか?」
「眠らねぇのか」


















横に座ったXANXUSの言葉に目を見開きながらも、
紅葉はそっと微笑んだ。
そして、コーヒーを軽く上げる。














「どことなく、眠ったらもったいないような気がして」















少しXANXUSから視線をそらして、
前を見やれば、葉夜がぐっすりと眠っている。
そんな姿に苦笑すると、肩に重みがかかった。




















「ざ、XANXUS様?」
「…るせぇ、起こすな」






















そのまま目を閉じるXANXUS。
眠るのだろう。

















「……おやすみなさい、ボス」



















黒髪をそっと撫で、
紅葉は傷の入ったその額にそっと口付けた。






















22:帰還






















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