中ぐらいの夢たち
□寒がりな私と 無愛想な彼
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気付いたのは帰る直前だった。
「あ、マフラー忘れた」
寒がりな私と
無愛想な彼
「なんで登校中に気付かないんだよ」
「いやぁー、朝はカイロがあるからいっかなぁ〜って」
「だからお前は風邪ひきやすいんだろ?少しは学習をしろ」
「若〜、私が学習なんて出来ると思う?」
「そうだな、出来てたら俺がこんなことに時間を使っていないな」
相変わらず若はクールですなぁ、
こうやって彼女様(笑)と一緒に帰ってるのに手すら握ろうとしないし。
まぁ、どこでもラブラブひっついてきて
見てて引きたくなるような奴よりは全然マシだけど。
「ったく、なんで手袋すら持ってないんだお前は」
「カイロのあったかいのって素手が一番感じるじゃん」
「だから、帰るころには冷めてる上に手以外は冷えてんだろ。風邪は肩や喉が冷えてくるんだぞ。…ちっ、しょうがないやつだ」
そうゆうと若は自分の巻いてたマフラーを丁寧に私の首にかけた。
「………あったかい」
若がマフラーを私の首に巻くとき、凄く大切そうな、真剣な目をみて
愛されてるなぁ…
なんて思う。
「フン、明日からはちゃんとマフラーしてくることだな」
「明日も忘れたらまた若のマフラーかけてくれる?」
「嫌だ。俺だって寒いのになんでわざわざ…」
また歩きだす。
二人きりの時間って、なかなかそんなにないから嬉しいような、くすぐったいような、恥ずかしいような変な感じ。
若が私をからかったり、私が若をからかったり、大きく特別なことがあるわけじゃないけど、穏やかで優しい時間。
でも、そんな時間ってすぐ過ぎちゃって、
あの曲がり角を曲がったら明日までお別れになってしまう。
やっぱりそれが少しだけ悲しくて、寂しくて…
こんなふうに私が思ってること若は想像もしてないんじゃないかと思う。
「あ、このマフラー、返さなきゃ」
私は若のマフラーを手をのばす。
「まだいい。それよりちょっとこっち来い」
若は公園に入っていく。
ずんずん行ってしまう若を遅れて追いかける。
でも、見当たらないぞぉ★(涙目)
「おい、なに遊んでるんだ」
若の声がして振り返る。
「え、ちょっと見失った」
「まったく、どこまでバカなんだよ…。ほら、手貸せ」
若は私の手を掴んで
「ずいぶん冷えてるな。これやるよ」
「ココアだぁ〜!」
あったかい、
「でも、若、ココアなんていつ買ったの?」
「これ以上ココアについて聞くと没収する」
「なんで…!?」
「フン…自分で考えろ……」
…この公園に自動販売機があるのなんか知ってるし、なんで買ったのかも正直考えなくてもわかる。
私のため、なんだろうなぁ…
でも、ちょっとだけでも若の口から聞きたいんだよ……
「はっくしゅん、」
横からくしゃみの音がした。
「わ、若、マフラー返すから!若が風邪ひいちゃうよ」
「俺はお前とは違うから大丈夫だ」
このあとくしゃみを連発するわりに家に帰ろうとしない若をみて、
普通の日に二人分の長さのあるマフラーを作ろうと心に誓った
(あなたは無愛想というより、強がりね)
→アトガキ●●