短い夢たち

□わたあめ
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次の日



『鬼灯様、今日もご苦労様です』


「おかえりなさい。丁度一段落ついたところです。少し休んだらまた仕事を片付けに戻ります」


『あら、あまり無理を重ねないでくださいね。わたあめ、買ってまいりましたわ』


「なんだか悪いですね」


『気になさらないでください。疲れたときは甘いものが一番です』


現世のキャラクターが描かれたビニールに入った状態から輪ゴムをほどく。


『この袋の柄が現世の子どもたちがわたあめを買うときもっとも悩むところなんですの』


「その場面はよく見かけます。気に入った袋がなくて泣き止まない子どもはどの地獄に落ちるのかを考えるながら横を通ります」


『子どものうちならいいじゃないですか。成長してまでやらないための時間ですわ。……はい』


真っ白のふわふわした甘味を鬼灯様の前にだす。

鬼灯様はふわふわしているものが好きですから、気に入ってくれるかと思っているのですが、どうでしょうか。



鬼灯様を見ると、……なんといいましょう。

いつもの表情は崩さずに、こう、雰囲気が変わったというか、

明らかに血色がよくなったというか……



「……もふもふしてますね」



『…、そうですわね』


驚きましたわ、第一声が“もふもふ”だなんて…


『どうぞお召し上がりください?』


「では、遠慮なく…!」

私の持っている白いもふもふを少しつかんで口へ運ぶ鬼灯様。

そしてかなり衝撃を受けている様子……。



「もふもふが口のなかで消えましたよ!?」


鬼灯様、キラキラなされていますわ…、



『喜んでいただけて、嬉しいですわ』




今日の鬼灯様の表情は、多分私には一生忘れられませんわ。




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