短い夢たち
□手を繋いだまま
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「もう、別れよう」
若にこの言葉を言われたのは唐突だった。
『……どうして?』
いつもの帰り道。
いつものように若を待って、手を繋いで帰ってた。
いつもの別れ道。
いつものように『また、明日ね』って言おうとしたときだった。
「関東大会はお前も試合、見てたよな」
私はコクンとうなずく。
「これから練習量を増やそうと思うんだ。青学に負けたのは…俺のせいだ」
『若、きっとそれは違うと思う。それに、私と別れることに繋がりがみえない』
ぅぅん、ホントはわかってる。
「これ以上お前に迷惑はかけられない」
ほらね、
若は優しいから。
『私は大丈夫だよ?若の隣じゃなきゃイヤだよ?』
「…、俺が、ダメなんだ、」
まだ、手を繋いだまま…
「お前は絶対、俺が練習してたらみてる、ついてる。どんなに夜遅くなってもな。朝、早くからだって来る気だろ?」
『うん。………迷惑?』
「……あぁ。」
若は嘘をつくのが下手だね。
私にはわかるんだよ。
迷惑じゃなくて、心配でしょう?
そして、一番心配なのは若のペースに合わせた私が
身体を壊すことでしょう?
そんなにやわな体じゃないことは若も知ってるけど、
あなたは関東大会のときから“万が一”を考える人になったから、
『……わかった、今まで…ありがとぅ…』
「ごめんな、泣くなよ…」
『若、勘違い、しないで?これは、この涙は…』
若と会えたこと、
若と恋したこと、
若と一緒にいれたこと、
若が、愛してくれたこと、
あたたかな、愛をくれたこと…
その全てに対する
嬉しいって、
ありがとうって
涙なんだよ…?
あ、若の手、あったかい……。
手を繋いだまま
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