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□そんな、おまえも×真田幸村
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ふと考える。



あいつは一体、どれくらいの人間に
好意を持たれているのか。




まずは、
俺の一日の行動を教えてやろう。



江戸に滞在していると、
突然家康が訪ねてきて、


尾張の信長から、
武将を集めて宴を開く。と文が来たと。


一緒に行かないかと誘われたが、
俺が招待されたわけでもないしと断ると、

名無しに向かって、
久しぶりに母上にも会いたいだろう、と
弱いところをついてきた。


俺の手前、
快く誘いに乗るわけにもゆかない名無しは
困った顔のまま家康の申し出を断っていた。


そうだな…名無しも
もうしばらく母親の顔を
見ていないことだし…


だが家康は名無しを
連れていきたいだけとしか思えず、
俺も簡単に
首を縦に振るわけにもいかなかった。


家康はとりあえず出立まで日もあるし、
ゆっくり考えてくれと言い残し
俺たちのもとを去って行った。



「名無し、行きたいのなら、行って来いよ。俺に遠慮することはない」


強がって心にもないことが口からでた。



「ありがとうございます!」
なんて言われたらどうすんだ?



「いえ、そんなわけにもゆきません。幸村様が残られるのに、私が1人でなんて。」



ほっと胸を撫で下ろす。



だが、好きな女の喜ぶ顔が
見たいと思うのは俺も同じ。



次の目的地は決まってないが、
尾張にまた立ち寄るのもいいかもな、
なんて考えていると。


俺の着物を畳みながら名無しが、



「それに、1人で帰っても、今の状況を話したら、追い返されてしまうでしょう。好きな人のお傍にいなさい!って」



とふふっと笑みをこぼしながら言った。



直接、まだ会ったことはないが、名無しの母上だ、
素晴らしい人に違いない。



やきもちを焼きたくなるほどの
優しい顔に思わずぎゅっと抱きしめる。



「幸村様?」



「もうすぐここを立つ、尾張へ行こう。」



「い、いいえ!そんな私の都合で…」



「気にするな、まだ挨拶もしたことねぇーしなっ、安心させてやれ。きっと心配してるぞ」



「…ありがとうございます。」



そう言って振り返った名無しと
目線が交わうどちらともなく目を閉じ、
唇が重なる瞬間、



「あんたち!趣味悪いわよ!」



と怒鳴り声とともに障子が
バーンっと倒れてきて、

その上に、佐助と才蔵が倒れこんできた。



「お二人とも!大丈夫ですか?」



慌てて駆け寄る名無し。



「ほっときなさいよ、二人の時間をのぞき見してたのよ〜いやぁね」



と仁王立ちしている梅一。



「いってーな、梅ちゃん!」



「お黙んなさい!」



「なんで俺まで…」



「同罪よ!」



二人は起き上がって、
障子をなおしながら、
ぶつぶつ言っていた。



「だいたいなんでのぞき見なんてしてたのよ?」



「不躾な言い方だな〜オイラ達は幸村様が尾張に行くように話に来たんだよ」



「そういうことだ、のぞき見じゃない」



「またいつもの幸村様のやきもちで名無しちゃんが里帰りできなくなったらかわいそうじゃないか」



二人は梅一さんに流れを説明していた。
三人でふむふむと話し込んでいるが、
俺は顔から火が出そうだった。



「幸村様は強がりなんだ、素直に尾張に行くと言えばいいのに」



「そうそう、ホントは自分だって連れて行ってあげたいくせにさ〜」



「確かにそうねぇ〜」



こいつら完全に
俺がいることを忘れてるな。



「そんでもってかくかくしかじかでさ……そしたらさ二人がいい感じになっちゃったから、出ていくタイミングを逃しちゃって…」



「だからってそこは空気読みなさいよ!いいところだったのに!」



「なんだい!梅ちゃんだって覗いてたんじゃんか〜」



「だいたい梅一、お前こそこんなところで何をしてるんだ?」



三人に覗かれていたことと、
俺が焼いていたことがばれてること、
邪魔されたことにもいつものことながら
俺も頭に血が上る、



「さ、三人とも!落ち着いて、幸村様に全部聞こえてますよ!」



それに気づいた名無しは
慌てて三人を止めに入る。



「「「…あ…」」」



「お前ら!ささっと出ていけー!」



俺の怒声と共に三人とも
一目散にいなくなった。


静かになった部屋で、
名無しがあんなに怒らなくても…と
苦笑する中、

すっかりへそを曲げた俺は、
ゴロンと横になり、ぶすっとしたまま。



こんなとき名無しは特に優しい。



俺のそばにより、
なんとか機嫌を取ろうと
あれやこれや話しかけてくる。



「幸村様?何か欲しいものあります?お茶でもいれましょうか?」



「……」



「散歩でもいきましょうか?」



「……それより、さっきの続きだ。」



「えっ…///」



俺にしてはかなりの大胆発言だと
内心驚きながら名無しの頭を引き寄せる…








「ちょっと待ったー!!」







「う、梅一さん?!///」


さすがの名無しも驚いたのか
顔が真っ赤だ。



「ごめんなさい邪魔しちゃって、幸村様に文のお届けだったのよ〜長くなったら困るから、信長様からよ。じゃあね」



と障子を閉める時、
「はい、もういいわよ」と去っていった。



「ゆ、幸村様…///」



「いいわよって…出来るかー!」



二人して赤くなるしかなかった。




これが俺のある一日だ。
で始めに戻るわけだ。


なんでこいつはこんなに好かれるのか?
ついでにいつも邪魔がはいる。


家康にはじまり…


なかなか気が抜けねぇなぁ…





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