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□そんな、おまえも×真田幸村
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数日後、俺たちは尾張に向かって、
歩いていた。


先日梅一が届けた文は、
信長から宴の誘いだった。



不本意ながら家康も一緒だ。




俺にも招待が来たのだから、と
結局行くことになり、


名無しがつらいと
馬を貸してくれたからだ。


馬に乗れない名無しは
俺が連れてくことにした。



尾張につくと、
とりあえず清州城を目指した。


城につくと、すぐに部屋に通され
宴は明日の夜だからと
今日はのんびり過ごすことにした。



部屋に四人そろって、
今日の行動を模索していると

廊下をドンドンと大きな足音が
こちらに向かってきていて、

部屋の前で鳴りやむと
ざっと障子が開いた。



そこに立っていたのは、



「幸村、久しいな。」



「あぁ、そうだな…信長」



織田信長。今天下に一番近い男。


信長は早々に俺に挨拶を済ませると
くるっと向きを変え、



「相変わらず元気そうだな名無し」



「お久しぶりでございます、信長様」



名無しに話しかけた。



「明日の宴は派手にやるぞ!うまい飯いっぱいだからな好きなだけ食え!」



「それは楽しみですね」



「食いすぎて腹壊すんじゃねーぞ笑」



「そ、そんなに食い意地はってません!」



「はは、冗談だ」



そんなやり取りを横目で見る。
別にいいんだけどな。



「じゃ、またな。遅れんじゃねぇぞ」


と信長は名無しの頭を
くしゃっと撫でて
ドカドカと部屋を出て行った。



「さぁ、幸村様どうします?」



佐助がとたんに口を開く。



「何がだ?別にどうもしねぇよ!」



別に信長だろうが、
名無しは俺と恋仲なんだから
どうするもねぇだろ。



「えぇ〜…さっきは行くって言ったじゃないですか〜ひつまぶしの店…」



(そっちか…)



「興が逸れた、お前たちだけで行って来い」



「そんなぁ…」



「まぁまぁ、佐助さん」



「名無しちゃんは行くよね?」



「私も遠慮しておきますね」



「ちぇ〜幸村様のせいですよ〜」



と小さくつぶやいた佐助の言葉は
聞こえないふりをした。









佐助はぶつぶつ言いながらも
才蔵と町へ出かけて行った。


部屋には名無しと俺だけ。


名無しの実家には
城での用事が全て片付いてから
ゆっくり会いに行こうとなっていた。



(悪いことをしたな…)



ついつい勢い任せに出した言葉だが
名無しは町へは行かなかった。



「名無し、庭でも散歩するか」



「はい!」



少しでも外に連れ出してやろうと
誘ってみると、名無しは嬉しそうに
返事をした。


庭は立派に作り込まれていて
その中を二人並んで歩く。



時折見せる笑顔に
俺までつられて笑ってしまうのは
なぜなんだろう?




「幸村様!見てください」




そう言うと、
俺の少し前を歩いてい名無しは
指を指しながら嬉しそうに
こちらを振り向く。



「もうすぐ色が変わりますね」



みると木の枝についていた葉っぱが
徐々に鮮やかな紅に変わろうとして
絶妙な色味を出していた。



「あぁ…きれいだな」



たったそれだけの答えにも
名無しはさらに顔を緩ませる。



いつからか…こんな幸せを知ったのは…



今もし俺が独りだったなら、
葉っぱの季節の変わり目になんて
気付きもしなかったろう。



それだけでも俺が名無しと
一緒にいる理由がある気がした。




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