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□おれが、守りたい×真田幸村
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「私だってお役に立ちたいのです!」



「だめだ!」



「お、落ち着いて…二人とも」








ことの発端はこうだ。


旅の途中、


立ち寄った村で


こんな話があった。











この村から少し離れた

山中の村に山賊が押し入り

村を奪ったそうだ。





難を逃れた村人達は
この村に助けを求めた、





しかし村人達には
どうすることも出来ず、
手をこまねいていた。





領主にも幾度か助けを求めたが、

国の外れにあること、

戦が近いこともあり、

助けは来なかった。







そこに通りがかったのが
真田幸村様。





幸村様の噂を知っていた
村人は頼み込んだ





もちろん幸村様は快く引き受けた。




困っている人を放って置けない。




早速才蔵さんに様子を見てくるよう
指示をだし幸村様も準備を始めた。









私はお留守番。







もちろん一度は頼んだが
危険すぎるとあっさり却下された。








「俺達がけがしたら誰が手当てするんだ?」








とうまいこと
言いくるめられてしまった。






私だってたまに
手解きしてもらっているし、

普通の女の子より
少しは役に立つと思うけど…

足手まといにはなりたくないと
渋々承諾した。











佐助さんと幸村様の
準備が終わるころ、









才蔵さんが戻ってきた。









だがその顔はどことなく
沈んでいるように見えた。




それに気付き幸村様は
真剣な顔で聞いた、










「どうだった?才蔵」




「はい…私が見たところ、五分五分といったところでしょうか…」




歯切れの悪い才蔵さんに
私は緊張した。




今回ばかりはいつもと違うみたい。







才蔵さんの話によれば
敵は二十人あまり、


三人でかかれば


大したことではない


一人一人の力は


こちらに分があるとの事だった…

すると佐助さんが口を開く。




「なんだよ才蔵!弱気だなぁ、今までにもそんなのあったじゃんか、大丈夫だって」




「…もちろん幸村様が負けるような相手ではありません…」




「他にも何かあるのか?」




「その中に数名手練れがおります、そこそこの使い手かと…ですが本当の問題はそこではありません」



才蔵さんは続けた。



「手練れといえども、私達でかかればなんとか…問題は人質が…」




才蔵さんがいうには
女達が数名捕らえられている




女達が捕まっているのは
村の中心の小屋、




その前で山賊達が
固まっているらしい、




三人で同時に
全員の相手をするのは難しい、




その間に人質に
手を出される可能性がある為、

その前に人質を逃がさないと
厳しくなるだろうと。




「仲間がいるな…」



幸村様は静かに口を開き

遠巻きに私達を見つめている

村人に目を向けた。




「戦で駆り出されてるんだろう、戦えそうな者もいないし…」


「そうですね…」



三人共、
眉間にしわを寄せ考え込む。




私にふとある考えが浮かぶ。




「あの〜?私に考えが…」


「なんだ?」




私は思い付いたことを提案した。














話終えると、
途端に幸村様が口を開く。












「ばかやろう!そんなの承知できるわけがないだろ!」







幸村様の声が響く。








「ですけど、ようは人質がいなければいいんでしょう?だったら私がおとりに…」





と私は続ける。



幸村様は話にもならんと
いった調子で、






目を瞑り、腕組みしたまま
他の策を練っているようだ。












「私だってお役に立ちたいのです!」



私は引かず、なおも頼み込む。



「だめだ!」



幸村様は目を開ける事なく
ピシャリと言い放った。



「お、落ち着いて…二人とも」




佐助さんが口を挟んだ。









「……幸村様が守ってくださるんでしょう?才蔵さん達もいるし、」










本音だった。


私には幸村様がいる。


何もこわいことなんかない。








今度は目をぱちくりさせて、



幸村様は少し固まっていたが、



はっと我に返り、





「当たり前だろーが」





と照れ臭そうに、
私の頭を撫でた。



手を離すと、
ふっと笑って、



「わかったよ、お前もつくづく頑固者だな」



と言った。






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