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□お前に、贈るもの×真田幸村
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今日の幸村様は
いつもより少しだけ
そわそわしている気がする。



いつも以上に無口だ。



私の問い掛けにも上の空で
顔を見ようともしない。




上田の幸村様のお屋敷で
過ごす日々は私にとって
本当に幸せな日々だ。


幸村様と平穏な毎日を過ごす。


如月に入って、
幾日かたった頃から

幸村様は毎日のように
どこかに出掛けていく。



気になって一度聞いてみたけど
教えてはもらえなかった。



道場にでも行くなら
内緒にする必要はないし、



今までこんなことは一度もなかった。



遅くまでいったい
何をやってるんだろうか?


上田は幸村様の故郷だ。


幸村様にとっては住み慣れた土地。


昔からの知り合いも多いだろう。

そんな人達に、
会ったりしているのかとも考えた。



だけど、私に内緒に
しなくちゃいけないの?


一度芽生えた疑念は
なかなか消えなかった。



幸村様は教えてくれない…



となれば…



ある日、私は才蔵さん達に聞いた。



佐助さんは慌てたように
わざとらしく、



「え…なんのこと?」



とだけ言ってそそくさと
その場を去っていった。


佐助さん達が幸村様の行動を
知らないわけがない。


どうして隠す必要があるのだろう?


幸村様のことを
信用していないわけじゃない。



だけど、



幸村様とは出会ってもう長い。


私は出会う前の幸村様を知らない。



なんだか最近は気にしてなかったけど、
幸村様はモテるんだった。


背は高くて、体は逞しいし
強くて、ちょっと不器用で
優しくて……


お顔だって整っていて、
至近距離で見つめられれば


きっと誰だって胸は高鳴る。



ついつい不安になる。



もしかして女の人に
会ってるんじゃないかとか。



生まれ育ち、長く住んだ場所で
昔好きだった人が
ひとり、ふたりいたって
おかしくはない。


幸村様が私以外の女の人に
触れたり、笑いかけたりするなんて
考えられない。


私は頭を大きく振って、
思考をいったん止める努力をした。


まだ確信があるわけじゃない。


私はひとつ心に決めて、
実行に移すことにした。





夕刻すぎ、幸村様は
いつものように屋敷を出た。


いつもなら笑って送り出すだけだけど、
私はあとをつけることにした。


こんなことするのは
ものすごく気が引けたけど、
何か動かずにはいられなかった。




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