その他・オリジ
□世界を輝かせる魔法
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《世界を輝かせる魔法》
最近新しく建てられた、お洒落な家も可愛いけれど。
それよりも、窓枠が少し錆びたあの家の方を好きだと思ったのは。
空は水色に染まって、広く輝いている。
きっと冬だから、空の青は薄くて。
でもそれが、建物の角をキラキラと輝かせている光のせいかもしれないと錯覚するから、薄い色さえ愛しい。
何より今日は、いつもより暖かいから。
整然としていない道が、鋭角に出会っているのも、その角に交番が建っているのも。
児童館の体育室で子供たちがお遊技をしているのが、遠くの窓に見えたのも。
公園から聞こえてきた子供の声さえ。
こんなにも愛しいのはどうして?
人が作った物は、暇つぶしに過ぎないと思っていた。楽しいけれど、便利だけれど、その時が過ぎれば、それも忘れてしまう。
人が作った物なんて、全然綺麗じゃなくて、綺麗なのは自然だけだと思っていた。
人も同じで。
毎日笑い合っているくせに、縋っているくせに。
人間は、何だかあまり好きじゃなかった。
それなのに今日は、全部が綺麗に見えて。
愛しくて愛しくて堪らない。
切ないくらい。