その他・オリジ

□月
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《月》

ふと夜空を見たら、ぼうっと明るい場所があったから、あの雲の向こう側に月があるのだと分かった。
なんとなく、君みたいだと思った。

少しの間空を見つめていたら、雲が切れ、まるで自分の願いが空に届いたか、或は雲が、上がるのを待っていた幕かのような気分になった。
そのままみとれていれば、月は一瞬一瞬違う表情を見せるかの様。そして気付く。月は決してその表情を変えていない。表情を変化させているのは、前を横切る雲の方だ。

こんなに綺麗なのに、僕にはこの風景を留めておく術がない。だからここに、高名な画家か、有名なカメラマンがいてくれたらいいのに、と思う。
僕は、この美しさを伝える言葉さえ持っていない。

留めることが出来ないと知りながら、それならせめて僕の記憶に少しでも残したいと、もう暫くみとれていたら、再び月は雲に隠れて見えなくなった。

END
 

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