復活

□そんな幸せ
1ページ/3ページ

《そんな幸せ》

「なぁ、雲雀は高校どこ受けんだ?」

夕方の応接室。窓から入る黄色い光に弱く照らされただけの室内は、薄暗い。
夕日を背に座っている雲雀の方を、眩しさに目を細めながら見る山本は、床にしゃがみ、机の上に腕と顎をよっこいしょ、と乗せていた。

「僕は受験しないよ」

二月の学校。しんとした応接室の中に、雲雀の静かな声が流れる。それが何となく山本を寂しい気持ちにさせた。

恐くてずっと聞けずに、そのままにしていた。
今雲雀の言葉でそれが、自分が望んでいる答えを聞くことが出来る質問に変わったかもしれない、という希望が生まれた。
しかしその希望が逆に、聞きたくない答えが雲雀の口から紡がれた時のショックを大きくするのではないかという思いもあった。
だから、次の雲雀の言葉はなるべく考えないようにした。

応接室が寂しいのは、きっとそのせい。
自分の心臓の音が聞こえるんじゃないかと思った。

「そっか」

たったそれだけの言葉を言うのに、随分と勇気を使った気がした。会話をなるべく進ませたくなかった。
その先を、知りたい。けれど、聞きたくない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ