廃品置場

□玩具−11
1ページ/1ページ


「あるんだろ?」
「……え?」
「全てを捨てる覚悟が」


その日は、ひどく苛立ったのを覚えている。
好きだ好きだと伝えるくせに、即答しようとしなかったから。


「所詮その程度か」


自然と、声も硬くなる。
視界の端でシーツが濡れ、広がる重い沈黙に笑いが込み上げた。
こいつがいくら泣こうとも、別段オレには関係のないことだ。
愛しているわけじゃないのだから。

なのに、


「私……は……」
「もういい。話し掛けるな」


なぜ、これほどまでに胸が痛む?


「っクロ……」
「二度、言わせる気か?」


思えばこいつも馬鹿な女だ。
全てを捨ててついて来て、オレが愛し返す保証など、どこにもないというのにどうして。


「私は、クロロと一緒にいたい……」
「ああ、そう」
「一緒にいさせて……」


どうしてそれが、嬉しいなどと。
こいつが俯いているのをいいことに、緩んだままの口元を締められずにいる自分の感情が理解出来ない。


「クロロ、好き……」


見返りもなく、愛もなく。
それでもお前が、オレに尽くす覚悟でいるなら。


「……知ってるよ。呆れるくらいにな」


泣き崩れるお前を抱き締め、胸が詰まるほどの息苦しさを感じた日。

愛してるわけじゃない。



end

小ネタ/クロロが家にやってきた


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ