廃品置場

□玩具ー27
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「あ、おかえりクロロ。今日ね、帰りコンビニ寄ったらプリンの新商品出てて……っどうしたの!!?」


朝イチで出掛けていたクロロが、夜になってから帰ってきた。カチャリと部屋の扉が開いたから、いつものクロロかと思って振り向いたのに、この衝撃。
目を見開いているのはクロロも同様で、口を半開きにしたまま呆然とする私に、その表情は怪訝へと変わる。


「どうした、とは?」


ついでにただいまと聞こえ、コートを脱ぎ、きっちり締められていた首元のネクタイに人差し指が掛かる。
痛いくらい脈打つ心臓は、今にも破裂してしまいそうだった。
だって、だってその顔。いつも見慣れた涼し気な目元に、


「……眼鏡……」
「ああ、これか。今日の仕事で必要でな。適当に……」


言い終わることもなく「だからか」と私を見るクロロの視線が途端に憐れみを帯びた。
どんな仕事だよ、なんて突っ込む暇も今は惜しい。ネクタイに掛けた指同様、眼鏡まで外してしまいそうだったから、私は慌てて駆け寄り、待って待ってと懇願した。


「お前本気か?ただの眼鏡だぞ?」
「クロロは自分のイケメン度合いをわかってない!何なのそのチョイス、わざとなの!?なんで縁なしにしたの!?かっこよすぎでしょ……!」


蹲るように泣いたので、クロロの表情まではわからないけれど、きっと先程よりももっと、もっともっと呆れた顔をしているだろうことは目に見えていた。
だって仕方ない。初めて見たのだからクロロの眼鏡姿など。妄想ですら補いきれず、実物の破壊力といったらもう。


「お前の視姦には慣れたつもりでいたが……」
「視姦じゃない。クロロは女心をわかってない」
「わかってたまるか」


ぐすっと顔を上げたら、意外にも眼鏡は外しておらず、クロロは私の前にしゃがみながら頬杖をついていた。


「お前って、本当にオレが好きだよな」
「好きだよ。好きすぎて苦しいよ」
「これの何がそんなにいい?」
「え、力説していいの?」
「……聞いたオレが馬鹿だった」


やれやれと立ち上がるクロロと共に腰を上げ、目に焼き付けようとジッと見つめる。クロロは額のバンダナをとったその手で、溜息を吐きながら私の頬に触れた。
僅かに首を傾け細められた目に、呼吸すら忘れてしまいそうになる。


「し、死にそう……。クロロかっこいい……かっこいいよ……」
「それはどうも」
「キス……していただけませんか……?」
「しない。お前に死なれると困るから」


勇気を出して言ったのに、クロロはしれっと返してくる。
ならばもう外してしまえばいいのにクロロは、ずっとそうやって私の頬に触れたまま、意地悪く反応をうかがってくるのだ。
そして、ニィッと開かれた唇から赤い舌が覗いたかと思いきや、少しだけ縮まった距離にギュッと瞼を閉じ、口付けを待ちわびる。


「お前の性癖をどうこう言うつもりはないが」
「せ、性癖って言うのやめてもらえませんか」
「まぁ、見せてやるよ。これだろ?お前が欲しいのは」
「え……?」


いつまで経っても貰えないその熱にそっと片目を開けば、数歩後退したクロロが、見せつけるような流し目でシュッと勢いよくネクタイを引き抜いていた。
上着をバサリと脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンが上から一つずつ外される。鎖骨に光る指輪。覗く厚い胸板。クイッと眼鏡を上げ、クロロはひどく艶のある笑みで言った。


「そこの今にも死にそうなお嬢さん。見物料は、駅前の限定プリンでいかがですか?」
「よ、喜んで並ばせていただきます……」


ほら来いよ、と手を取られ情熱的に合わさる唇。こういう時、意外と眼鏡って邪魔なんだなと思ったことは内緒にしておこう。クロロ絶対怒るから。


「っ、好き……」
「眼鏡が?」
「クロロが……!」


いつもとは少しだけ違うクロロの、眼鏡の奥のその瞳。
引き寄せられた手の代わりに、私からスッと眼鏡を外したら、やけに熱のある淫猥さだった。


求められるがまま繋がる最中。
眼鏡姿を思い出し、頬を緩ませてしまった私を見るクロロの視線は、気付かないふりをした。







<小ネタ/クロロが家にやってきた>


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