廃品置場
□玩具ー29
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クロロという人物を考えてみた。
恋い焦がれて呼び寄せるまで、私は一体彼のどの部分を重要視していたのだろうかと。
彼を構成するその要素、全て含めてクロロという一個人に成り得るのだ、それを考えるというのもおかしな話ではあるが、こうして出会い、言葉を交わし、同居し、人生のほんの一欠片。分かり合えるなどとは思いもしないけど、少しだけ踏み入れた内側の周辺で、改めてクロロ=ルシルフルという人間を見つめていた。
「クロロ」
「…………」
「クロロ」
「……なんだ」
「なぜ関係のない人たちを殺せるの?」
「さぁな。関係ないからじゃないか」
あの日の問いを復唱した。
クロロは、間髪入れず同じように返してきた。
しかし、少しだけ違うのは、非常に面倒そうな声色を含んでいるということだ。完全に迷惑がっている。話しかけるなと、全身で語っていた。
「ねぇ、ちょっとその本置かない?」
ページを捲る指が止まり、この時初めてクロロと視線が重なった。真っ暗な瞳が探るように私を射抜き、この目力だけで簡単に後込みしてしまう。
こんな状態で長時間見つめ合えるほど私もまだ強くはなく、すぐにそらして曖昧に笑う私の頬を、クロロの指先が強引に掴み取る。片手で両頬を思いきり潰され、好きな男を前に、なんて表情をさせてくれるのかと思った。
「萎えるな」
「誰も誘っていません」
「何があった」
「別に」
「言えよ」
「……クロロは、色んな側面を持ってるなぁって」
さあ、この時クロロがどのような表情を見せたのか。各々が浮かべるその姿こそ、個人が思い描くクロロそのものなのだろう。
答えなど、まだなくていい。
例えばいつか、私ではない誰かをクロロが本気で愛した時、旅団の存続を優先し恋人を見殺しにするような、そんな男であればいいと思う。
その過程で生み出される、おそらく人生初めての葛藤で、彼はまたひとつ大きな成長を遂げるのだ。
「一緒に、死んでやろうか?」
旅団優先、個々の意思なし。
けれど、誰かが後を継ぐなら己も同様クモの一部、欠けたとて支障はない。
ああ、これほどの男に言われたら、それは一体どれほどの幸福だろうか。
小ネタ/クロロが家にやってきた