TOV
□その瞳は僕だけを映しその声は僕の名を呼んだ
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「怖い夢を見たんだ。きみが死んでしまう夢」
ぽつり、と隣でフレンが言う。
追憶に耽っているというよりはただなんでもないことを零すように。
「そいつは、災難だったな」
同様に、なんでもないことのようにそう返す。
「でも、ひとつだけ良かったことがあったんだ」
顔だけこちらを向き大して嬉しくもなさそうにそう言う。
「何?俺が世界救った勇者にでもなってた?」
それがいかにもおかしいというようにフレンはくす、と笑う。
「ふふ、それはもうやり遂げたことじゃないか。きみはね、ユーリ。…きみは、僕の腕の中で死んでいったんだよ」
僕の姿を瞳に映して、僕の声を呼んで、僕に手を伸ばして。
そう嬉しそうに話す笑顔を曇らせる返答ならいくらでもあったけれどそのどれも口にはできなかった。
Fin.