稲妻
□『死ね』だなんて軽々しく使うもんじゃありませんそれくらい分かるでしょう?
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放課後の教室、ふたりっきり。
夕陽が綺麗だけれどあのあかい色は時々直視できなくなる。
まぶしくって、血みたいで。
不意に君が口をひらいた。
「死にたいと思ったことはないの」
死だなんてものについての哲学に付き合う気はないんだけれど突然なにを言い出すんだろうね君は。
「なんどもあったよ」
「それなら今生きているのは何故」
「死んだその後どうなるのかわからないからね。真っ暗なところに一人っきりとかはまっぴらだから」
得体のしれないものを回避する為に苦しい生にしがみついた。
今なら懐かしい笑い話にでもできそうな話だけど。
いつしか君も過去から抜け出す救いになっていたと言ったらどんな反応してくれるかな。
「死んだ後はみんな一緒にお花畑に行くんだよって言ったら死んでくれるかい」
「一人ここじゃないどこかに行くっていうのは怖いなぁ」
「それなら一緒に行ってあげる」
笑って返せばなんでもないように君は言う。
魅力的なお誘いだけど残念ながらそれはお断りだ。
「色々理屈を並べたけど、生憎漠然と怖いっていう気持ちもないわけじゃないんだよね」
「そう。なら君には死を求めないよ」
なんだか残念そうに見えるのは気のせいだろうか。
一人で死ぬのが怖いのか。あるいはただ、一人になるのが怖いだけなのか。
後者ならいくらでも付き合ってあげる。でもね。
「君と触れ合えなくなるのは嫌。だから死ぬのは嫌死なれるのも嫌。」
証明終了。