稲妻
□(そんなこと俺が思うはずないのに!)
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「ねぇ、あのとき君はなんて言ったの」
『あの時?』
「最期の時。最後に、君の肉声を聞いたとき」
『さあ、知らないな。それは俺のいった言葉じゃないから』
「だけど『お前』は『アツヤ』でしょう?」
『『俺』はお前だよ。本物のアツヤじゃなく、お前だ。分かってんだろ?…その答えを知る機会はもうない。お前がそうだと思ったもんだけが答えだ』
「そう。…なら、これが答えなんだね」
『何?』
「…『生きろ』って」
『…あぁ、それがきっと本当の答えなんだろうな』
嘘。本当の答えを僕は知りもしない。むしろ生きていたかったろう彼から言い放たれた言葉は、むしろ逆の意味を持っていたのではないかと思う。
所詮これもそんな真実から目を逸らす為だけの無意味なやりとり。
そう、その位分かっている。
僕の命は彼の命を奪い、今ここにあるのだと。
この生は罪であり罰
(君の言葉、或いはただのさようなら)
Fin.