稲妻

□たとえこれが子を持つ親の気持ちだとしても貴様と夫婦なぞまっぴらごめんだ
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○設定
*稲妻町のアパートで一人暮らししてる中学生士郎と大学生の南雲と涼野(ここ二人同居中)。
*CPっていうより家族みたいなニュアンス(予定)。
*「涼野さん」「南雲さん」に違和感感じる方はもやもやするかもしれない。
*士郎と涼野は知り合い(出会いとか大まかにしか考えていないので細かい部分はいつかちゃんと書きたい)。
*バンガゼとかガゼバンのつもりはないけれどそうなるかもしれないしならないかもしれない。







「…最悪、だ」

週末だからと週番の仕事が長引き、寒い中家のドアの前まで辿り着いて鞄の中を探れば鍵がない。
どこかで落とした――わけではないだろう。
家を出る前に鞄をひっくり返してしまった記憶がある。おそらくはその時に。
渋々大家さんの部屋のチャイムを鳴らしてみたが誰もいる様子がない。
このままではかなりまずい。学校で気付いたが財布も忘れておそらく開かずの部屋の中だ。
買いそびれた昼ご飯はみんなが弁当を分けてくれたり放課後風丸がまさしく疾風の如き勢いで現れてお菓子を恵んでくれたけれど。

「困ったなぁ…どうしよう」

普通なら友達の家に転がり込んだりするのかもしれないが気が引けて行動に移れない。いやそれ以前にそもそも人の家の住所を覚えていない。

とりあえず休めるような場所、と考えて近くの公園まで足を延ばす。
一応は、というように遊具がある程度のこの公園に遊ぶ目的で来る子供はそう多くない。まして遅い時間ともなればその数少ない訪問者もおらず。

2つ並んだブランコに腰を下ろせばキィ、と音を立てる。
携帯電話もゲームも持っていない状態では時間を潰す術もなく、暇を持て余しながらそのまま揺れていると

「何してるんだい。吹雪士郎。」

声が、降ってきた。
見上げた先でかち合った瞳は見紛うことない、よく知る静かなそれ。

「家に入れなくなりました、涼野さん」
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