夢小説
□ヒメゴト
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今私の目の前で、酔い潰れた△△ちゃんが眠っている。
最近元気がない様子だったため、何かあったのかと思い飲みに誘ったのが4時間前。
最初は渋っていたものの、それとなく言葉を引き出すとずっと溜め込んでいたのだろう、堰を切ったように話し始めた。
彼氏が電話に出ないこと。
ついこの間女と手を繋いで歩いているのを見てしまったこと。
△△ちゃんは沈鬱な気持ちを振り払うかのようにお酒をぐいぐい飲んでいた。
ぐすぐす泣くこの子を前に、私はどうにか気持ちを楽にしてやろうと慰めるばかりで、気付いたら△△ちゃんはぐでんぐでんに酔っ払っていた。
居酒屋からそう遠くない△△ちゃんの家に送り届けてやるでなくこうして私の家に連れ込んだのは、介抱してやろうという気遣いの気持ちよりも下心の方が大きかったのかもしれない。
ドアを開け一度玄関先に座らせると△△ちゃんは一声うなって横になってしまった。
鍵を閉めて振り返り、起こしてやろうと腕を伸ばしたその時、私はスイッチに気付いてしまった。
キャミソールから覗く胸の谷間と、赤らんだ頬や首筋と、熱い吐息に。
――ずっと△△を見ていた。誰よりも近くで。
△△が私とのことを上司と部下としか認識していなくても、△△がそれ以上の関係を望んでいないならばと私は高望みなんてしなかった。
楽しくお喋りしたりたまに飲みに行ったりできるだけでよかった。
そばにいれるだけで十分だった。
彼氏ができるまでは。
飲みに誘っても断られることが多くなったし、着替えの最中に胸元の赤い痕を見てしまった時は嫉妬に駆られた。
街中で彼氏と歩いているところに鉢合わせた時に見た笑顔。
できることなら私がそんな風に笑わせてやりたかった。
胸が痛くて、私はその時ちゃんと笑い返せていたかどうかわからない。
それでも、△△が幸せならばと応援していたのに。
裏切られた。
△△も。
私も。
浮気なんて私なら絶対にしないのに。
ずっと△△のことだけ見てるよ。
不安な気持ちになんてさせないよ。
だから。だから。
「ちょっとだけならいいよね」
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