夢小説

□転んだ先の魔女
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「うわっ…!」

広大な荒野にぽつんと立つ秘密収容所。
両手いっぱいに小銃を抱えて歩いていた△△は地面の窪みに足を取られ、転んでしまった。
小銃がガチャガチャと地面へ散らばる。

「いったぁ…」

「どんくさいわねぇ」

座り込んだまま見上げると、そこにはイマイチ似合わない青空を背にヘックスがこちらを見下ろしていた。

「だって前見えなかったんだもん」

「横着してないで少しずつ運べばいいでしょう。そもそもこんなものたくさん抱えてどうするのぉ」

「車掃除するって言ったらついでに車に載せといてって言われたからさ」

ヘックスは誰にと問いかけ、カットスロートのメンバーの一人の名を得ると「ふぅん」と一言。
まったく、アイツどういうつもりかしら。△△にこんなもの持たせて。
言葉にはしないが眉間にしわを寄せる。
主として情報を扱うのが仕事である△△には火器類に手を触れさせないようにしていたのに。
もっとも、それは△△が銃に触れば誤発砲させる銃音痴というわけではなく、単に△△の白く小さな手に銃は似合わないと思っているのと、万が一と怪我なんてされたらたまらないからというだけだったが。
ともかくヘックスは△△に手を差し伸べた。

「ありがと」

△△はそれを掴んで立ち上がったが、瞬時に足首に走った痛みに顔をしかめた。

「いたっ」

「もしかしてどこか痛めたの?」

「ん…、足首捻挫したみたい」

それを聞いてヘックスは溜息をついた。

「あ、今溜息ついたでしょ」

「あなたに対してではないわよ」

発端の彼はあとでシメておこう。
ヘックスのその決意を知る由もなく、△△はほんとかなぁ、と訝しがりつつ足を引きずりながら散らばった銃を拾い上げようとした。が、ヘックスはそれを制止し、有無を言わせず彼女を抱き上げた。いわゆるお姫様だっこという形で。

「わーっ!ちょ、何してんの!下ろして!」

一瞬きょとんとした△△だったがすぐに状況を理解するとジタバタともがき始める。

「暴れると落ちるわよぉ」

「だって!いいから下ろして!重いから!」

「ほんと、重いわぁ」

言葉とは裏腹にヘックスは涼しい顔をして言う。
鍛えてるからこれくらいでは堪えたりしないのだろうけど、そういう問題じゃない。重い銃火器を持ったりしているからこそ、体重がバレる危険性があるのだ。
しかしヘックスは△△の要求に応える気は微塵もなく、むしろ落とさないように「ちゃんとつかまってなさいねぇ」と言う始末。
そんなヘックスに諦めたのか、△△は

「あーっ!もう!ダイエットしますーー!!!」

最近気になっていたこともありヤケクソ気味に宣言した。

「まぁ、私はそのままのあなたが好きだけどねぇ」

ヘックスはそう言って涼しく笑い、いたずらに△△の耳をかぷりと噛んだ。

「ひえっ?!」

思わず変な声が出てしまった△△に満足そうな笑みを浮かべ、そのままスタスタと歩き出す。

「〜〜っもう。びっくりするからそういうこと無闇にしないでよね」

無闇ってわけでもないんだけどねぇ。
そっと零したその言葉は吐息に混じり、△△には聞こえない。

「…あれ?ヘックス銃あのままじゃ、」

「あとで奴に片付けさせるからいいわ」

「そ、そう…。てか、どこ行くの?」

「私の部屋」

「なんで?」

意図が読めない△△は率直な疑問を口にする。無垢な瞳で見上げてくる彼女にヘックスは含み笑いでこう返した。

「生まれたままの姿のあなたはもっと好きよぉ」

その言葉の意味するところを察して△△の顔は真っ赤になった。

「な、何言ってるのよ…」

こんな昼間から、だのまだ仕事あるのに、だのもごもごと口を詰まらせる△△を見下ろしてヘックスは楽しそうに笑みを浮かべた。





「ていうか先に湿布貼らせてよね…」
「はいはい」





***
14.11.17

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