夢小説
□明らかな証拠をお見逃しなく
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彼らは普段アホなことばかりしているけれど、女子の変化についてはなかなか目ざといらしい。
「△△、最近綺麗になったよな」
「そうそう。俺も思ってた」
最初の内は、「ほんと?ありがとうー」なんてしらばっくれて喜んでみせていたけれど、二人――アレックスとマルコスはどうもその話題を引っ張る。
ついには、「好きな人でもできた?」なんて聞いてくる。
バレると色々やりにくくなるから絶対に誰にも内緒にする、という約束をしたのは付き合うことになったその日の内。
それを思い出して私は疑惑を全否定。
でも全く信用してくれないらしく。
「いや、その目は恋してる目だね」
「つーか、もしかして俺?」
「いや俺だろ」
なんてお約束なやり取りが始まった。
「恋なんてしてないよ」
「じゃあさじゃあさ、俺と始めない?」
「あっお前抜け駆けすんなよな」
気付けばいつの間にか壁際に追い詰められて壁ドン状態。
えーっと、どうやってここから切り抜けましょうかね。
よく知る相手だからこそ無理に逃げ出そうとせずに、上手い躱し方はないものか思案する。
「おい」
そんな中ふいに聞こえてきた声。
聞き慣れたその声の主が誰なのかは振り返らなくてもわかる。
でもそこには明らかに不機嫌さが混じっていて、恐る恐るそちらに目をやると、案の定ミッシェルさんがそこにいた。
やばい。変なとこ見られちゃった、どうしよう。
ただ、声の感じの割にはその表情はいつもの如く涼しげなミッシェルさん。
でも彼女が私に向けて次に放った一言は。
「見えてるぞ」
そして自身の首元をトントンと指差して見せる。
なんだろうと思って私は自分の首に触れてみた。
すると昨夜のことを思い出して、ミッシェルさんが示す意味に思い至った。
してる最中にされた記憶はないから、もしかしたら寝てる間につけられたのかもしれない。
手で隠したけれども一歩遅かったようで、アレックスとマルコスは私の首につけられているソレを見つけてしまったらしい。
ああなんてこと。恥ずかしくて顔が熱い。
「なんてこったぁぁぁ!」
「もうそういう関係になってるってのかよ…」
これで言い逃れができなくなった。
相手が誰とまでは言わずにいてくれたことだけが不幸中の幸い。
「クッソ、△△にそんなことを許す相手がいたなんて」
「相手は誰なんだよ?俺たちの知ってる奴か?」
酷く驚いたアレックスとマルコスだったが、すぐに持ち直して今度は相手を聞き出そうとしてくる。
ますます解放してくれなさそうな二人から繰り出される尋問の数々。
どう潜り抜けようか必死な私を尻目にミッシェルさんは。
「恋愛は自由だが風紀を乱さない程度にしろ」
涼しい顔でリーダーとしての訓示を授けると、すたすたとこの場を後にする。
去り際に含み笑いがちらりと見えたし、所有印を付けた張本人のどの口がそんなこと言っているのだろう。
廊下の向こうに去りゆく背中は、私はその話題にはちっとも関係ないとでもいうような空気を纏っている。
爆弾を落とすだけ落としといて無情にも私を置いていく彼女が恨めしい。
でも彼女の完璧なまでの無関係を装う態度から、この二人は相手がミッシェルさんであることは露にも思っていないだろう。
これはきっと、彼女なりの二人への牽制と独占欲の表れ。
文句の一つでも言ってやりたいけれど、逆に私が無防備だったと叱られることになるんだろう。
おまけに、二人のおかげで下手したら今夜はこの赤いしるしがもっと増えることになるかもしれない。
それを思うと体が熱くなってくる気がするけれど、まずはここを切り抜けることが先決。
私は上手い言い訳がないか思考を巡らせた。
***
15.05.29