夢小説

□始まってすらいないから痛くもない
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注意:ヒロインはエダとデキてる前提です。








「ご注文の品は以上になります。宜しければサインを。ミスバラライカ」



3か月ほど前に暴力教会の新入りとして紹介された△△はすっかり手慣れた様子で私に相対する。
取引の時くらいしか顔を合わさないが、その短い時間とたまに出入りするレヴィやロックなどの話から抱いた△△に対する印象は、『突き抜けるほど素直』であった。
初めて顔を合わせた時、シスターエダに同行してきた△△はまるで新卒の新入社員のように青々とした香りを放っていた。
それに加えて幼く見える外見からは、この街には酷く不似合いな人間に見えたものだ。
それ故、ゆくゆくは△△にも取引の一端を任せる予定であることをエダから伝えられたが(シスターヨランダのお眼鏡に適ったわけだからそれなりに信用には足りるのだろうが)本当に任せられるのかと疑問を抱いても仕方のないことだろう。
自己紹介する△△を不信感を露わにしつつ、頭のてっぺんからつま先まで一通り眺めたところで思い出したのはラグーン商会の水夫の存在。
もしかしたら同じ日本人のこの子も化けるかもしれないと私にしては酷く好意的に捉え、表情を和らげると。


「想像していたよりお美しい方なので驚きました」


単純に畏怖のため、もしくは権力に擦り寄るために贈られる世辞は馬鹿らしく毎度鬱陶しくて寒気がする。
しかし△△から不用意に放たれた言葉は放心したようにこちらを見つめるその表情からして、何の見返りも求めていない、心からのもの以外の何物でもなく。
最後に他意なく褒められたのは遠い昔のことだった。
だから初めて顔を合わせた、しかも同性の小娘に率直に賛美を受けて一瞬ぽかんとしてしまったのも無理はないはずだ。
シスターエダは何かを言おうとしたらしく口を開いたが、私の機嫌が降下するわけでもなかったところを見て、言いかけた言葉のやり場に困ったように口を閉じた。


「スパシーバ。可愛いお嬢さん」


私は僅かに微笑んで返すと、定型句を真に受けたらしい△△は照れくさそうに「すぱしーば」とはにかんだ。
それが私達の出会いだった。今思えば、既にその時から私はどうかしていたんだろう。




出された領収書にさらりとサインをする。
△△は「毎度ありがとうございます」と笑顔を浮かべた。
すっかり仕事に慣れたらしく、初めの頃の初々しさよりも着実に仕事をこなすスマートさが濃くなったのはシスターエダの教育の賜物か。
――シスターエダ。どこまで△△を『教育』しているのか。
ここ1、2か月で△△は一段と綺麗になった。彼女が持っていた少女のような無垢さよりも、代わりに纏うようになったのは大人の魅力。
それが意味するところは誰にだって予想がつく。
ただ、変わったといっても△△は尼僧服に身を包んでいる。露出が少ないため△△が見せる艶やかさはふとした時に垣間見える程度で、だからこそより蠱惑的だった。時折見せる無邪気な笑顔は健在だったからそれは余計に。
△△が私に対して好意を抱いているのは確かなことで、しかしそれは私と同じ種類のものではないのもまた確かだった。
それならば、△△のシスターエダに対する気持ちはどういった種類のものなのか。
もしかしたらこの子のことだから右も左もわからないままに彼女の手に落ちてしまっただけかもしれない。
△△がエダを見ているのも、彼女しか知らないからなだけかもしれない。
それを確認したかった。否、むしろそれは体裁に過ぎないのかもしれない。
ただ私は報われない想いを私という爪痕に代えて、△△に刻み付けたかっただけなのだろうか。


「ねぇ。ちょっと話があるんだけれど」

「はい。何でしょうか」

「前回の注文――シスターエダが担当だったな」


私の口調が変わったことに△△の表情が固まったが、構わず続ける。


「注文した後、至急の追加が出たから無理を言って用意してもらった。届いた品は漏れなく上等だった。ここまでは問題ない。が、金を払った後、礼の一つでもとお宅に電話した。出たのはシスターヨランダで、そこでわかったが、彼女に申告されている値段よりいくらか高い金額で買わされていた。手間代として考えてもだ。シスターエダは馬鹿なのか調子に乗っているのか――。私相手にそんなマネをするとは、舐められたものだな。酷く不愉快だ」


至極真面目に仕事に取り組んでいただけに、私のこんな表情を見る機会には遭遇しないと思っていたのだろう。
普段の明るさはどこへやら、△△は蛇の前の蛙のように立ち竦んでいたが、ここまで聞き届けると強張った顔で口を開いた。


「も、申し訳ございません。まず今回のお支払からその分プラスご迷惑料を引かせて頂きまして、」

「金だけの問題じゃない。うちの沽券にかかわる問題だ。シスターエダにはそれなりの仕置きはやむを得ない」


△△の顔色が変わった。


「あの、私でできることであれば何でも対応します。ですから、あの、その、仕置き、は……」


△△は恐る恐る申し出た。懇願するその眼には怯えの色が見て取れる。想定通り。


「何でも?」

「…はい」

「殊勝だな。……だが言っておくがお前には何の恨みもない。だから余り手荒な真似はしたくない。お前のような下っ端が噛んでいるとも思えないしな」


哀れな子羊の震える様子を眺め、堪能しながら言葉をつづける。


「だが、彼女にはやっていいことと悪いことの区別をついていないらしい。そこで、精神的苦痛を与えてやろうと思う」

「…?」


後ろに回り込み、△△の髪を覆うベールを引いた。


「あっ」


それが頭から外れると同時に彼女の豊かな髪が広がった。シャンプーの清潔な香りが立ち上る。
落ち着いたダークブラウンの髪は△△の整った顔立ちによく合っていた。
いつだったか、街中でたまたま見かけたのを思い出す。その時私は車の後部座席に乗っていて、横に座る軍曹と雑談をしていた。
窓の外に見つけた彼女はオフだったのだろう、私服姿で下ろした髪が夕日の中で風になびいていて、軍曹の言葉もろくに聞かずに見惚れていた。
信号が青に変わるのと同時に△△の姿は後ろへ流れていったから一瞬だったけれど、その光景は私の脳内に焼き付いていた。
眺めるだけだったその髪も、それ以上も意のままに。そう思うと歓喜に震えた。


「ミスバラライカ…?」


問いかけには答えず流れるようなその髪を片方の肩に寄せて首筋を露わにする。
普段日に当たらないその肌は透き通るように白く、陶器のようだった。
指先でそっとなぞると△△は小さく息を飲んだ。


「ねぇ。シスターエダにはどんな風に抱かれているの?」


耳に唇を寄せて舐めるように囁く。
△△はあからさまに身を硬くした。この子は聡い。この後どうなるか予測がついたのだろう。


「あなたを抱いたら、彼女はどうするかしらね」

「ミスバラライカ……冗談、ですよね…?」

「さあ。どうかしら」


そう言いつつ私は△△をソファに突き飛ばした。そのまま彼女の上に乗る。
△△は受け入れることがエダを救うことだと悟ったのだろう。抵抗一つせず大人しくされるがままになっている。


「シスターってどんな風に乱れるのかしら?」


触れるか触れないかという程度に首筋を指でなぞると△△はぴくっと身を竦めた。
だが全身をかっちりと覆う尼僧服では服の上からの前戯もままならない。
もっとじわじわと煽りたかったが、止むを得ず尼僧服を一気に首まで捲り上げた。
エダの趣味の下着でもつけているのかと思っていたら、なんてことない、小さな花々が刺繍であしらわれているピンク色の可愛らしい下着だった。


「ふうん。でも案外下品な下着もよく似合いそうな体ね」


△△は顔を背けることで羞恥に堪えようとしているようだった。
その顔には覚悟が浮かぶ。
その気丈さはいつまで持つだろうか。


「せいぜい楽しませて頂戴」


自覚できるほどの歪んだ笑みが浮かんだ。
下着を取り去り、露わになった双丘の白さに目を細める。
普段隠しているところを暴き、恋人以外の者に晒させている事実に愉悦が湧き上がる。下を拝見するのはもう少し後だ。
頂はまだ何もしていないのに存在を主張していて、淫猥さを放っていた。


「もう固くなってるけど、そんなに期待しているの?」

「ちがっ…」


反論を嘲笑うかのように頂を摘む。


「あっ…、っん……いや、ぁ」


くにくにと捏ねると気を紛らわすかのように首を振る。
弾いたり押し潰したりと執拗に責めると△△は面白いくらいに体を捩らせた。
胸が弱いらしい。健気に勃起する頂を口に含み、舌で転がしてやる。


「あっ…やぁっ……ん、はぁっ」


殺し損ねた声は一層の切なさが混じり、足ももどかしそうに擦り合わせている。


「彼女以外の女は知らないんでしょう」

「…っ」


答えないことを肯定と捉える。
たった一人だけに染められた体をこの手で蹂躙していると思うと支配欲が昂った。
ショーツに手をやると大きなシミができていた。


「好きでもない人間にされて、こんなに濡らしてるの?」

「ち、ちがいます…っ」

「違う?こんなに溢れてるのに?」


ショーツを引き抜き、後ろの方まで愛液を垂らしている秘部をなぞってみせる。


「や、やめてくださ…、ああぁっ」


咄嗟に閉じようとする足を抑えてさらにぐいと広げる。
そうすると秘唇がぱっくりと開いて、濡れそぼった口から愛液がとろりと溢れた。
あられのない△△の姿に口端が歪む。
足の間に顔を近付け、てらてらと濡れる花弁に舌を這わせた。


「ふああぁっ!?」


飛び上がるかのように甲高い声がして、同時に両足が私の頭を挟んだ。
構わずにじゅるじゅると音を立てて欲を吸うと、今度は手が伸びてきて頭を押し返す。
それも若干遠慮がちなのが彼女なりにこの上下関係を理解している証拠らしく、面白い。


「ぁ…っ。ダメ、ですそんなとこ…っ!」

「こうされるのは初めて?」


滴る愛液を舌先で掬い取り、チロチロと秘唇をなぞる。


「うあっ…ひぁあっ、…あっんぅ」


恐らく初めてなのだろう、未知の感覚を受け止めきれずに声を上げながら身悶える。
△△の小さな手が私の髪をぐしゃぐしゃにした。
蕾の皮を剥いて舌先でくすぐってやる。


「あ。あっ。ふぁっ…!」


心許なげに私の頭を彷徨っていた指先が髪の間に入り込んできつく掴まれる。
エダがまだ手をつけていない行為を先に△△に覚えさせることができて、私は気分が高揚するのを感じた。
私の手の内でされるがままに悶えている△△に、別の考えが湧いてくる。
これが『仕置きの代行』でないと知ったらこの子はどう思うだろうか。
秘部への責め立てを指に代えて耳元で囁いてやる。


「ピンハネされたなんて嘘よ」

「そんな…じゃあどうしてこんな…っ」

「ただの興味よ」


言うや否や指の動きを激しくした。


「そんなのって、あっ、あっ、っやぁぁぁぁぁっ!!」


△△が一度気をやった後も二度三度と繰り返し、遂に意識を手放すと私は彼女を解放した。





―――
――



しばらくして意識を取り戻したらしく、ソファの上の人影がもぞりと動いた。
△△は起き上がるとかけていた私のコートを剥いで、背もたれに掛けた。
床に散乱している衣服を緩慢な動作で一つ一つ拾い上げ、身に着ける。鼻をすする音が聞こえる。
私は執務机で椅子に掛けたまま葉巻を吹かしながら横目でそれを眺めていた。
彼女は廊下へ通じるドアの前で一息つき、涙をぬぐうとこちらに向き直った。


「……バラライカさん。あなたのこと、お慕いしていました。戯れでこんなことをされても、憎めない程に」


彼女は泣きそうな顔で微笑んだ。


「自分でもこの気持ちが何なのかよくわかりません。わからない以上、私は何もできません。だから、またご注文があれば伺います。これからも暴力教会をどうぞご贔屓にお願いします」


『慕っていた』だなんて抜かしておいて締めは『どうぞご贔屓に』。
営業スマイルを見せる彼女はたった数十分前よりも大人びていて、私がそうさせたはずなのに思わず奥歯を噛みしめた。
自分の立場を弁えて感情を抑え、太客を失わないために社交辞令を駆使することで、本意を隠す。
△△は十分に「暴力教会のシスター」足り得る者だった。
彼女は一礼するとしっかりとした足取りで部屋を出ていった。




キスマークならエダに対する挑発の意味でいくつも残してやったけれども、唇にキスをしなかったことを今更後悔した。
彼女を責め立てながら自分に言い聞かせていた。
これは戯れなのだと。戯れにキスは必要ないのだと。
唇を合わせたら、そこから想いが流れ出て△△に伝わってしまうかもしれなかった。伝わって、拒絶されることを恐れていた。
しかしどうせ叶わないのなら、彼女の唇を吸って、せめてもの意思表示として噛みつけばよかった。
いつもと変わらないスピードで足音がどんどん遠ざかっていく。
その気丈さがまた△△を求めてやまない理由の一つになる。けれど彼女が私にくれていた心からの笑顔はもう二度と見ることができないだろう。
右手の中指と薬指を鼻先につける。△△の女の匂いがする。
絡めるように舌を這わせると体の奥が疼いた。
なのに心臓は一層キリキリと悲鳴を上げて、その二本の指をがりりと噛んだ。






***
15.07.17

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