夢小説

□砂糖のようで砂のような
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「△△」

問いかけると彼女は的確な情報を伝えてくれる。

「△△」

からかうと彼女は頬を膨らませて叩いてくる。

初めは私を警戒していた△△だったけれど、今ではすっかり信頼しあえていると自負している。
けれど未だに私の△△に対するベクトルと、△△の私に対するベクトルは不釣り合いらしく。

「△△」

想いを乗せると、――彼女は曖昧な表情で距離を取る。





眠気が訪れるまでの間共有する穏やかな時間。きっかけは携帯の中の画像だった。△△が今までに撮ったスイーツや風景の写メを見せてもらっていた時。
一緒に映る友人たちとのエピソードに耳を傾けたり、綺麗に撮れた風景写真に綺麗でしょなんて鼻を高くする△△に頷いたり。
そして次に現れたのは、△△とその友人らしき女の子のツーショット。
その瞬間△△は喚いて私から携帯を取り上げようとした。けれど私はそれを阻止するように腕を伸ばす。


「いいもの見つけたわぁ」

「わー!ダメです!」


その画像は所謂変顔写真。
△△の新たな一面を目に焼き付けようと、伸ばされる手をかいくぐりながら画像をガン見する。


「△△もこういうことするのねぇ」

「ちょっ、返してください!」

「別にいいじゃない」

「やですよ恥ずかしい!」


スマホを取り上げようとする△△と逃げる私。すったもんだしているとまぁお約束のように。


「…っ!」

「……あらぁ」


ベッドに仰向けに倒れた△△とそれを上から見下ろす私がいた。
白いシーツに散らばるダークブラウンの髪。ほっそりと伸びる首筋。襟ぐりの大きいTシャツから覗く鎖骨。至近距離で混じり合う吐息。
それらが△△を扇情的に見せて、自然と手が伸びていた。


「…っ……、」


△△の耳を指でなぞると△△は顔を逸らし、声にならない声を漏らした。見ると目をきつく瞑っている。
堪えるようなその表情に欲が湧き上がるのを感じる。
△△はこうして触れられることを望んでいない。
わかっていながらも止められなかった。
もっとこの子の見たことのない表情を見たくて、耳に唇を寄せる。
途端にびくりと身を竦ませる△△。ここが弱いのだろうか。


「や、めて、くださ…」


ショートパンツから伸びる細い脚に脚を絡める。
初めて触れ合った△△の脚はとても滑らかで気持ちがいい。
体中の血液がどくりと波打つ。
思わず外耳にかぶりついたその時、


「ヘックス…!やめて…!」


振り絞るように、切実に放たれた拒絶の言葉に、私はようやく理性を取り戻した。
覆い被さっていた体を起こして△△から離れる。
△△もすぐに起き上がり私から少し距離を取って俯いた。


「ごめんなさい」


けれど、手に入れたいものも、成し遂げたいことも、叶えるためならどんなことだってやってのけるのが私だった。
△△のことだって、好意があるなら振り向かせたいと思うのは当然のこと。
――求めるのは、いけないこと?
そうは思えど、投げかけるべきではない疑問を飲み込む。
その時、微妙な沈黙を△△が破った。


「…普通に、仲間として笑いあったりするだけじゃダメなんですか?」


その声はいつもはつらつとした△△らしからぬ頼りないもの。けれど私は即答した。


「ダメよ」


こちらを見つめる瞳が揺れた。


「それだけじゃ嫌。あなたに私と同じだけ愛してほしいし、あなたの全部が欲しいの」

「熱烈ですね」

「そうねぇ」


できるだけ涼しい顔をして返すと、△△は泣いているみたいに笑った。




だから私は、今日もまた甘く苦いざらざらとしたものを噛み潰す。





Title 愛に飢える彼女のセリフ"1.求めるのはいけないこと?" 
by 確かに恋だった


***
15.12.03

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