夢小説

□愛燦燦
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朝日が頬をくすぐる眩しさに目が覚めた。
開眼一番に目に入るのはヘックスの寝顔。ヘックスより早く目を覚ますのは私にしては滅多にないことで、珍しい寝顔を眺める。
起きている時はあんなにカッコよかったりするのに、この時ばかりはどこかあどけなさが垣間見られる。
といってもそう感じるのは惚れた弱みからで、カットスロートのみんなに口でも滑らせてそんなことを言ったら笑い飛ばされてしまうかもしれないけれど。
日がな一日接しているテロリストたちは勿論、仲間たちすらも知らないヘックスを知っているのは私だけだというほのかな優越感。
この人が私のそばで安らかに眠っていてくれることに、しみじみと幸福を感じる。
そんな気持ちが顔に出ていたらしい。気配を察知したヘックスが目を覚ました。


「…何ニヤニヤしてるのぉ」
「べ、別にー」
「またよからぬこと考えてたんでしょう」


ヘックスは伸びをして欠伸混じりに指摘してくる。


「私はいつも清廉潔白だよ」
「清廉潔白な子があんなにやらしくなるのねぇ」


含み笑いで告げられた途端、昨夜のことが思い出されて私は真っ赤になった。


「なっ…それとこれとは関係ないでしょ!」
「関係ないことないわよぉ」
「そんなの、全部ヘックスのせいだし!」
「どうかしらねぇ」
「うう…!もうあんなこと絶対してあげないからね!」
「はいはい」


絶対本気にしてない。おまけに楽しんでいる。目と鼻の先でニマニマ笑うヘックスに私はぐぎぎと唇を噛む。
ヘックスと気持ちが同じになってからというもの、好きな気持ちはどんどん大きくなっていった。
私の気持ちの方がはるかに大きくなってしまうんじゃないかと思う程に。
初めはヘックスの方が私を好いていてくれたから釣り合いが取れてきたのだとも言える。
けれど、両想いになる前とはうってかわってちょいちょい余裕があるところを見せてくるからなんだか悔しいというのは私だけの秘密。


「ねぇ、今日は久し振りに街へ出かけようよ。天気もいいことだし」


私はベッドから降りて窓を開ける。
外は相変わらず荒涼としたアフガンの大地が広がっているけれど、すがすがしい朝の空気と日差しでいつもとは少し違って見える。
こんなささやかな日常にも喜びを見出すなんて、本当に恋する乙女しちゃってるなぁなんて自嘲していると、ヘックスがベッドから声を掛けてきた。


「窓閉めて?」
「いいけど」


言われた通り窓を閉める。


「こっちきて」
「何?」


素直にヘックスの言う通りにしていたらヘックスの罠に嵌っていたらしい。
ベッドに歩み寄ると、ぐい、と腕を引かれる。


「あっ、ぶない」


ヘックスを潰さないように手を付く。
体勢を立て直そうとするも、そんな暇など与えないとでも言うように抱きすくめられた。


「お出かけの前にのんびりしましょう」


そう言いつつ髪やら頬やら首筋やらにキスの雨を降らせるヘックス。
くすぐったいけれど心地良い。
でもこのパターンだともしかしたら出かけることなく一日が終わってしまいそうな予感がする。
ついでに言えば”のんびり”でもない。


「ちょ、ヘックス…っんぅ」


一つ文句でも言ってやろうと口を開いたらすぐさま口付けられて。


「どれだけ抱いても足りないのよ」


口付けの合間に野性的な瞳でそんなことを言われたらもう頷くしかない。
そして私はこんな世界の端っこみたいな荒野の真ん中、朝の光差し込む部屋で、燦燦と降ってくる愛に溺れるのだ。







Title:愛燦燦
by 深夜の夢小説60分1本勝負@DN60_1



***
16.01.11

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