夢小説

□愛を知らない独裁者
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「んっ…、んぅっ」

後ろ手に手錠、足首にも足枷を施された△△はガチャガチャと騒がしい金属音を立てながら身を捩らせた。

「具合はどう?△△」

目をきつく瞑って足の間に押し付けられた電気マッサージ機からの刺激に堪える△△を見下ろす。
胸は下着でかっちりと隠されているとはいえ着ていたシャツは腕に絡まりくしゃくしゃで、下ろされたショーツは足枷の所で絡まっている。履いていたパンツはベッドの下に放っていた。
健全な男であれば垂涎の光景だろうがこの部屋は人払い済み。他人に邪魔されたくはなかった。
△△は口に嵌められたボールギャグを噛みしめ、ベッドに散らばった髪を乱している。

「ああ。そのままじゃ喋れないわね」

わざとらしく付け加えて電マを横に放り投げた。強制的に与えられる刺激からようやく解放された△△は目を薄く開けてこちらを見た。
状況的に睨みつけていてもおかしくはないのだけれど、△△が置かれているその状況のせいで眼差しは鋭くもなんともない。むしろそそられるくらいだ。
口元の唾液に髪が張り付いているのを避けてやり、ボールギャグのベルトを外した。

「っう、く…はぁ…はぁ…」
「痛いかしら?顎」

熱い吐息を漏らし濡れててらてらと光る唇を親指でなぞりながら△△の下顎をさすった。

「…っ……は、…」

長時間口を開けたままでよがっていたせいか、話すのも一苦労なのだろう。潤んだ瞳が私を捉える。
でもダメ。まだ許さない。だって、

「あなたが悪いのよ。オペレーターに色目なんて使うから」

どんな仕事にも落ち着く時間は訪れる。そのしばしの数分間に、オペレーターと二人きりで楽しそうに話しているのを私に見られさえしなければ△△もこんな目に遭わなくてよかった。

「あなたは私のものなのよ」

△△のすべては私のコントロール下にある。△△のすべてを掌握し支配することはとてつもなく甘美で魅惑的だった。それを脅かされたのだからそれ相応に『学んで』もらわないとならない。

「それをもう一度わからせてあげる」

△△の体をひっくり返して背中を露わにさせる。達し疲れたのか抵抗はまるでなかった。
人差し指で背骨をなぞり上げるとそれだけで情けない嬌声を上げるものだから笑みが溢れてしまう。

「あぁっ、あっ、ん」
「ねぇ、私はあなたに学んでもらいたいだけなのにどうしてそんなに悦んでるの?」
「あっ、ひぅっ」

腰に手を回して持ち上げ、尻を高くさせる。滑らかで丸みのあるそれを見ていると傷つけたくなってしまう。けれど私は△△の体に傷を残したくはない。だから言葉で辱める。

「ここはこんなになってるわ。ほら。わかる?」

丸見えの秘部に指を突っ込んでわざと音を立てるように掻き回した。

「あぁっ、あんっ、あっ」

与えていた刺激は外側にばかりだったから、初めて与えられたナカへの刺激は増幅されて△△に伝わったらしく、私の指をへし折りそうな勢いで締め付けてくる。

「何度もイったんでしょう?なのにまだ足りないの?」
「あ、あっ。さい、ふぁーの、で、イきたいです…っ」

熱い吐息を吐きながら切れ切れに言葉を紡ぐ。
可憐さと芯の強さを併せ持ち、部下の男たちを魅了する△△が、他の誰でもなくこの私を選び進んで屈服する。
最上の快感に口元が歪むのを止められない。

「欲張りな子」

止めていた指を動かす。

「あぁっ」
「でも、」

△△の好きなところを探る。

「あっあっ」
「そういう子は好きよ、私」

辿り着いたそこを、思い切り擦り上げる。

「ああっ、あぁあっ」
「好きなくせに、なぜ逃げるの?」

身をくねらせながら逃れようとする腰を引き寄せてしっかりと押さえつけた。

「あっ、だめ、だめ、」
「ダメじゃないでしょう?」

じゅぷじゅぷと水音が立った。
合わせるように枷の鎖がじゃらじゃらと暴れる。

「ああ、っあっ、さいふぁあっ」

△△は一際高い嬌声で私を呼びながら達した。



―――――
――





気を失っている△△の手首についた手錠の生々しい痕。そっとなぞると△△が目を覚ました。

「ん…サイファー…?」

名を呼ばれ、△△の手首に触れる指先が必要以上に優しげだったかもしれないと即座に手を離した。
△△はまず最初手首を確かめ、次に足首を擦った。両手両足を拘束していた枷はとうに外している。
ほぼ剥き出しの体にかけてやっていたシーツを見ると嬉しそうに体に巻き付けた。

「もしかして、ずっとそばに?」

△△はベッドサイドの椅子に座っている私を見上げて問う。
なぜ。なぜそんなに幸せそうな顔で手首の痕を撫でるの。
私は彼女に思い知らせるために枷まで用いたのに。
そんなに無防備に私を慕うのなら、なぜ私だけのものにならないの。
目を覚ましてから眠りに就くまで、私だけを視界に入れて私だけを考えて私だけに色々な表情を見せればいい。
そんなことは夢幻だとわかっているのに△△が他の人間と話をしているとつい考えてしまう。
それで△△を呼びつけて、何度も抱いて。なのに完全には満たされない。
わかっている。満たされないのは何故なのか。
△△と出会い、△△に魅了され、いつしか無意識の内に望んでいた。
私が最も不要とするものを、私は悲しくなるくらいに欲していたのだ。
ふにゃりとした微笑を浮かべる△△に見せられる顔などなくて、私は席を立った。

「サイファー…っ」

踵を返す瞬間、さっと表情を変え身を起こした△△が視界の端に移り、焦燥を帯びた声が自動ドアの稼働音に重なった。
わかっている。△△がどんなにあけすけに恋慕の情を私に向けていても「愛してる」という言葉は決して使わないことを。
愛など要らない。愛が自由を殺す。
そんな私のことをよく知っているからこそきっとその言葉を使わない。
野望の達成には愛は邪魔でしかない。なら、△△は要らない…?
自己矛盾に嫌悪感が湧く。
今の私は、あまりにも無様だ。



背後で自動ドアが閉まった音を聞いてから私は深く息を吐いた。
ただの支配欲だと思っていた。征服欲だと思っていた。私はもはや、△△を愛してしまっているのだろうか。







***
17.6.12

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