百合小説

□興味のないはずのすべてのこと
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夜勤を終えて日が昇る前の蒼い空気の中マンションの階段を上がる。
1DKの一人暮らしにはちょうどいい部屋。

鍵を開けてドアを開くと、正面の部屋のドアが開けっ放しになっていて先輩が昨日の服のまま雑魚寝しているのが見えた。

愛猫をおばあちゃんちに預けてからはうちに来ることが増えていた。




先輩が本部を出たのは昨日の19時だが、来たのは夜も更けた頃だろう。
仕事中は一度も姿を見なかったが、帰り支度をして地上にでる途中に上から降りてくる司令とすれ違ったから。

そんなことしてるならうちに来ないで下さい。

相対するときは勿論今ですら一人ごちることはせず、彼女の丸まった背中を横目にして渇いた喉に買ってきたペットボトルのお茶を二口流し込んだ。

同じくコンビニ袋に入っているヨーグルトを食べる気は失せたのでそれは冷蔵庫にしまう。

中には調味料や作り置きした保存食しかない。
時間通りに帰れないことはざらにあるから買い物は大抵食事一、二回分だけだ。

目の前のタッパーを取り出す。
見ただけじゃなく重さからしても減っていないのはわかるが、弾力に抗って蓋を剥がした。

一昨日の夜作ったポテトサラダは手が付けられておらず、ずっしりと重い。

ゴミ箱の上で逆さまにしただけでは固まったままだが、振れば大部分が落ちてどさりという音を立てた。

まだ食べられるものであろうと、食べてもらいたい人に食べてもらうという目的を果たせなかったものに未練はなかった。

一昨日も来て泊まっていったが、先輩はうちに出入りしている痕跡になるようなものは残さない。

つまり私物を置いていかないし、出たゴミは帰りがけにコンビニに捨てていく。

そしてうちのものを消費することもまた、ないのだ。
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