スレイヤーズ短編集

□太陽と氷の世界
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 宿の女将さんも心配してくれていたらしい。
 野菜や豆がたっぷりの温かいスープをすぐに用意してくれて、「足りなかったら、いくらでもあるから、声をかけるんだよ!」と言ってくれた。
 リナはオレに背をもたれさせるようにして、ベッドの中でゆっくりスープを口にしていた。
「うまいか?」
「ん、すごくおいしい」
 寒くないように、リナの肩口を両の手でさすりながら聞くと、素直に返事が返ってくる。
「……ガウリイは食べないの?」
「リナの食事が終わってからでいい」
 栗色の小さな頭にキスをすると、くすぐったそうに笑う。
 ――前なら考えられない光景だよなー……これ。
 こういう関係になっても、数年間、恥ずかしがって、まともにスキンシップしたこと無かったもんなー……等と思わず遠い目をしてしまう。
「……ガウリイ?」
「ん?」
「何考えてたのよ? また、昔の事?」
 ……お見通しかよ。
 笑ってしまったオレに、「やっぱりー!」と顔を紅くしてリナが少し怒ったように振り返った。
 振り返ってすぐ、「うあ、寒っ!」と布団をマントのように羽織り、抱きついてきたが。
「なあ、リナ?」
「何?」
「明日の朝、外に行かないか?」

 ――硬直。

「――冗談でしょ!? 寒くて死んじゃうわよっ!」
「ちゃんと抱いててやるからさ」
「恥ずかしい事を、さらっと言うなぁぁぁぁっ!」
「まあ、聞けって」
 オレはスープを用意してもらっている間に仕入れた、明日の朝見られるという、その話をリナに話して聞かせた。
「な? 見てみたくないか?」
「……それは、気になるけど……」
 しばらく、寒さと好奇心を天秤にかけていたようだったが――
「…………わかったわよ。もし、見られなかったら、ここの宿代と食事代、ガウリイ持ちね」
「おう」
 苦笑して、了承の言葉を受け取る。
 その晩は二人とも、早く眠りに就いた――
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